爆速カルチャーを支えるヘルプデスクが従業員に届けるマジ価値とは?
はじめに
この記事はこんな方におすすめです
ITヘルプデスク・ナレッジマネジメントに課題を感じている企業の方
情シス、ITヘルプデスク業務に従事している方
自己紹介
こんにちは、フリー株式会社で「カルチャーインフラチーム」というチームに所属しております、kingです!freee入社約1年半ですが、既に4本目のnote執筆です。普段はイベントやライブ配信を通したカルチャー発信に従事しておりますが、noteを利用したテキスト発信も積極的に行っていきたい所存です。
今回は同じ事業部に属しているヘルプデスクにkingが職場体験しつつ、リーダーであるkonoさんにインタビューをしてきました。
チーム紹介
king:freeeのヘルプデスクとはどんなお仕事でしょうか?
kono:ITヘルプデスク専門チームに分類されます。主に、全社共通のITツールの管理・PCをはじめとするIT備品の貸与/管理にともなう入退社受け入れやアカウント発行。またそれらに対する問い合わせ対応を行っております。
king:今までのkonoさんの経験からすると「ITヘルプデスク専門チーム」というのは一つ特徴的だとか?
kono:大きな会社の特徴の一つだと思います。300-400人規模ほどの会社だと、「情報システム部(コーポレートIT)」いわゆる情シスの担当者が兼務していることがほとんど。従業員からの問い合わせをうけるITヘルプデスク単体でチームがあるというのは、大企業ならではだと思います。
king:僕自身も情シスの方々の中にITヘルプデスクを担当している人がいるイメージなのですが、それぞれの違いってどのようなイメージでしょうか?
kono:専門としているスキルに違いがあると思います。
情シスはイメージ通りITのプロ。ネットワークやIT端末に関する高い知識を持ち、会社のITインフラを支えることを得意としています。一方でITヘルプデスクにはフロントで従業員対応をするホスピタリティが求められ、備品の管理やコミュニケーションスキルを強みとしています。インフラを構築・保守する情シス、フロントで従業員対応にあたるヘルプデスクという整理になると思います。
king:フロントに立っているとITの専門的な知識が問われる問い合わせなども発生すると思うのですが、それにはどのように対応しているのですか?
kono:ヘルプデスクメンバーは一般的なITスキル・知識を保有していることが前提です。なので、PCが動かなくなった、ネットにつながらないなどの問い合わせの中でも、マニュアルが公開されていたり、事例としてよくあるような基本的な問い合わせにはお答えできます。
ただ先程話した通り、より専門的な問い合わせ(ネットワークなどの大元の部分)が発生した場合には、情シス部門にエスカレーションしていくというフローになっています。
king:それぞれで保有しているスキルが違えば、従業員に提供できるアウトプットも変わってきそうですね。
kono:専門チームと比較してどっちが、ということではなく、ヘルプデスクが対応するのはあくまで”従業員の皆さんが日々の業務のなかで発生したトラブル、困りごと”ということですね。日々の対応が従業員満足に直結する、社内でも重要なポジジョンだと思っています
急増する問合せをどう乗りこなすか
king:組織規模の拡大が続いた中で、ヘルプデスクにとっても紆余曲折があったかと思いますが、チームとして現在はどのようなフェーズでしょうか?
kono:freeeは急成長を続けてきた会社なので、これまで目の前の問合せやタスクを終わらせることで精一杯だったんですよね。今は品質に意識を向けながら対応できていて「いい状態」だと思っています。
品質に意識を向けられる余裕があるかどうかが一つ大きな境界線だと思っています。ここでいう品質とは、サービス/ホスピタリティ/スピード感/ナレッジの充実度合です。
king:現在の「いい状態」になるまでにやってきたことの中で特に重要だったことはなんでしょうか?
kono:まずは品質に意識を向けられるベースを創り上げるために運用改善に取り組みました。具体的に言うと、「道具を使うこと」と「問い合わせを減らすこと」です。どちらにも共通して言えることは業務の効率化を推進したということです。
king:すごい重要なことだと思うのですが、業務の効率化ってすごく大変じゃないでしょうか?「やりたくてもできない」という状況が容易に想像できてしまうのですが、、
kono:本当にその通りで、業務の効率化=アクションの変化だと思っているので、たとえ使えば便利になるシステムの導入だとしても、実際に対象となる人たちにとっては一時的とはいえものすごい作業コスト、業務負荷になります。なので「ただ業務効率化するぞ〜!」ではダメで、現場感を把握した上での工夫が必要です。そこで必要になって来たのが上記2つのアクションです。
king:なるほど。まず「道具を使う」とはどういうことでしょうか?
kono:ITツールを導入することで人的コストが掛かる作業を減らしました。もちろん導入時にそれなりの時間やコストが掛かるものですが、長期的にみたら圧倒的にメリットの方が大きいです。
たとえば、昔はPCのシリアルナンバーを目視で転記していたのですが、自社プロダクトである「Bundle」を利用することでQRコードでの読み取りが可能になり、工数の削減と正確性の向上につながりました。
現代のバックオフィス業務に共通して言えることですが、今までは人が労力を掛けてやっていたことをツールが代わりにやってくれるということが本当に増えてきています。
やらない勇気と従業員が求めるもの
king:もう一つ「問い合わせを減らす」とはどういうことでしょうか?できるものでしょうか?
kono:シンプルです。これまで「できるなら言われたことを全部やる」というスタンスをとっていましたが、対応範囲の線引きをしました。
なにかを変えようと思った時に、一時的に業務を減らすということが必須になってきます。これまで言えばなんでもやってくれた先が、急にNoといいだすのは従業員目線でみるとマイナスに見られがちですし、勇気のいることですが、品質に意識を向けられる持続的な運営を行うためには必要な勇気です。また「従業員が本当に求めているものはなにか」を理解することも重要だと思います。
king:従業員が本当に求めているものとはなんでしょうか?
kono:「早く解決すること」です。
意外と陥りやすいのが、わからないことでも真摯に一生懸命対応しようと自分で調べたりして結局従業員をまたせてしまうっていう。。一生懸命なのも、もちろん大事なのですが、そこには品質とスピードが伴っていないといけないと思っています。
フリーはセキュリティやネットワークなど専門チームが他にあるので、ヘルプデスクとしてやるべきことはやる、やらないことはやらないとして専門チームにトスしてしまったほうが解決が早い。。なのでまずはヘルプデスクとして解決しなければいけない問い合わせを明確にして、確実に解決していくことが必要でした。
SLAは従業員との認識合わせ
king:ヘルプデスクとしてのスタンスは理解できましたし、大変共感できたのですが、従業員にはどういう説明を行ったのでしょうか?(なんで対応してくれないの?が出てきていまいそう)
kono: SLA(Service Level Agreement)の導入が鍵でした。SLAはサービスの範囲や対応期日などを対外的に定義するためのもので、導入は私自身も初めての経験でした。
最初はノルマ設定みたいで正直抵抗があった(笑)のですが、導入してみるとただ対応期限を自分達に設けるのではなく、問い合わせ段階で「なにをどこまで」・「どれくらいのスピード」で対応するかを、問い合わせ段階で従業員と合意できるシステムだと導入をしてみて気付かされました。
king:確かに、対応期限をお知らせするだけだと思っていました。従業員が考える緊急度とヘルプデスクが考える緊急度に差もありそうですね。
kono:そうなんです。今までは従業員に「緊急度が高い」と言われてしまうと優先度を上げて対応するしかなかったんです。ただ全社の問い合わせに対応しているヘルプデスクからすると、もう少し余裕を持って対応したほうがいいものも多かったりします。
SLAは緊急度をヘルプデスク側で従業員に確認しながら調整できるという点でも導入メリットがありました。部署全体で使っているツールのトラブルと、個人のPCでトラブルが起こった場合、両方緊急度は高くても影響度を考慮して優先順位を決める感じです。
king:緊急度・優先順位を問い合わせ段階で従業員/オペレーター間で合意できるのですね。
kono:SLAがあることでヘルプデスク内での優先順位がハッキリしました。優先順位が高いものから確実に解決していく。優先順位がハッキリすることで「いまやるべきことはなにか?どこまでやるべきなのか?」が整理されました。緊急度が低いものも適切なタイミングで対応にあたることで、作業漏れを防ぐことができました。
正直今までは緊急性や重要性が高い問い合わせでもたくさんの問い合わせに埋もれてしまい、対応が後手になってしまうこともありましたし、タスクが整理されていないことで作業効率も悪かったです。
「まずは調べて」というスタンスの裏に隠されたホスピタリティ
king:SLAを導入するコストは非常に高いが、長い目で見るとメリットの方が遥かに大きいのがよくわかりました。問い合わせを減らすために他に取り組んだことはありますか?
kono:「なんでも問い合わせて」から勇気を持って「まずは調べてから聞いてきて」というスタンスを取ったことも大きかったです。
ヘルプデスクにくる問い合わせって、正直社内ナレッジをちょっと調べてくれたら解決できたのにな…という内容も多いんです。極端な言い方をすると「調べてわかることは聞いてこないで」っていう。これは本当に大きな決断でした。もちろんネットで調べてから聞いてきてではなく、社内のナレッジが対象ですが、、「まずは調べて」というスタンスを取る=調べたら知りたい情報が出てくる状態ということです。
「調べたのに出てこない」というのは従業員にとってよくない体験ですよね。「調べろって言ったのそっちじゃん」みたいな(笑)その状態にするためには大量のナレッジが必要です。
king:会社が急成長しているので、必要なナレッジは各所に散らばっていますよね。ただ調べたら出てくるのは理想ですが、環境構築は大変そう。
kono:ヘルプデスクの気持ちとしては、できれば全部の問い合わせに人力ベースで対応したい。その方が早いし、正確なことも多いので。しかし、この会社規模になってくると対応しきれないので、現在進行系な部分もありますが、ナレッジの精度と解答率にこだわって環境づくりをしています。
もしかしたら「まずは調べて」というスタンスに「冷たさ」を感じている従業員もいるかと思いますが、結果的にヘルプデスクだけにだけでなく、従業員にもメリットがあるスタンスなんです。
問い合わせ対応の軌跡がナレッジを創り上げる?
king:ヘルプデスク側は「問い合わせが減る」というメリットがあるとわかりました。従業員にはどんなメリットがあるのでしょうか?
kono:まずは目先で言うと、問い合わせのチケット起票をしなくてもナレッジがヒットすれば、自己解決ができるという点ですよね。
前述したSLAに準じて対応しているので、緊急度の低いものほど解決スピードが遅いです。なので極端な例えですが「マウス貸してください」の回答をもらうのに何日かかかったりするんですよね。freeeは所定の場所で配布しているので、ナレッジをみたほうがすぐに取りに行けてすぐに使えるっていう。
少し長い目で見るとナレッジ回答率(ナレッジがヒットし、解決できた件数から算出)の算出にも取り組んでいるので、調べていただくことで必要なナレッジが判明し、ナレッジ作成に取り掛かることができる。いまはそんなフローが整っていることで、調べていただけばいただくほど、ナレッジが増えていく。結果的にナレッジ回答率が向上し、チケット起票が減る。そんな統合された世界を目指しています。
king:従業員がナレッジ検索することがナレッジ管理に繋がっているんですね。検索するときに気をつけた方がいいことはありますでしょうか?
kono:いい質問ですね。「ナレッジがヒットしないからチケット起票した」と問い合わせをいただくのですが、ヘルプデスク側で調べてみるとナレッジがあったなんてことがよくあります。
これは検索時に「キーワードの単語などで簡潔に書いてもらう」・「キーワードを変えてみる」ことが大事かなと思います。「もっと広いキーワード設定でナレッジを作れよ」って思われると思うのですが、ナレッジがヒットし過ぎるという体験も良くないんです。どれが正しいのか判断が難しいので。検索時に少し意識してもらえると大変助かります。
king:「ヒットし過ぎ」確かに。ネットサーフィンしていて全く関係ないページが出てくることがよくありますね。問い合わせ対応の際にヘルプデスク側で気をつけていることはありますか?
kono:ナレッジがある場合はナレッジを案内、あとはなるべく少ないラリーで解決できる対応を心掛けています。こちらも対応が「冷たい」と思っている従業員がいるのでは?と思いますが、結果として解決は一番はやいんですよね。
ここは私の中でもせめぎ合いがありますし、実際に対応してくれているメンバーに浸透が難しいなとも感じます。将来的に対応実績をAIにインプットするとなったとき、逆にプラスアルファ的なコミュニケーションがノイズになってしまう。「AIリーダブル」ってバランスが難しいなって思います。
king:「AIリーダブル」初めて聞いた言葉です。目指す世界線も含めて詳しく教えてください。
kono:「AIが理解しやすいように」ということです。ナレッジ検索時にもナレッジ作成時にも、AIが理解しやすいように聞く・作るということが非常に重要です。要は端的、事務的にってことですね。人間からみると冷たく感じられるのはわかります(笑)これは「AIがほしい情報をすぐに教えてくれる世界線」を目指しているからであり、現在がその世界を実現するための準備期間だからです。
king:上段でも触れた道具の導入によって人的労力を削減するイメージでしょうか?
kono:もちろんそれもあります。よりスピーディーに正確な情報を届ける。ナレッジは引き出されてこそ価値があるので、ナレッジを整えて、AIがより多くの問い合わせを解決してくれたらオペレーターの負担は本当に減ると思います。
じゃあ負担が減ったらオペレーターが不要なのか?というとそうではないんですよね。何もかもAIが解決してくれるって未来はないと思うんです。調整やアレンジが必要になる”相談”はナレッジやAIでの解決が難しい。だからこそ「単純な問合せの解決ではなく、効果、重要性の高い相談に対応する時間を確保できる」またSLAで定めた業務範囲をひろげて、それこそ「聞けばなんでも解決してくれるヘルプデスク」を目指せるという考え方でいます。
freeeのプロダクトもそうだと思うのですが、一部分だけではなく総合的に従業員をヘルプすることができるような、統合された環境を作り上げたいと思っています。長い道のりだなって思いますけど、夢は大きくっていうことで(笑)
king:まさに統合体験!楽しみです!konoさんありがとうございました!!
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