ついにオープンした透明書店! 開店の裏側で起こった事件とは…
4/21にオープンした透明書店。
連日、たくさんのお客さんに来ていただいてうれしい反面、初めての挑戦にアクシデントが続出。
今回は特別編として、裏側で起こった事件などオープンから1週間たった所感をお話ししていきます。
早いものでお店がオープンして1週間が経ちました。きっとバタバタだった状況も徐々に落ち着いてきた頃かなと、おはなしをうかがいに蔵前へと足を運びました。
書店チームに話をうかがうと——
「もう……アクシデントの連続でした」
「今日は、お話ししたいことがたくさんあります!」
何やらいろいろと大変そうな様子。実際にどんな事件があったのでしょうか?
ぬるっとはじまった透明書店
——まずはオープンおめでとうございます。客足も上々だそうですね!
岡田:
おかげさまで、連日たくさんのお客さんに来ていただいています。
Web・活字の記事やテレビの報道を見てきてくださった方も多いのですが、ガラスばりで中まで丸見えなので「本屋さんができたんですねえ」と、通りがかりに立ち寄ってくださる近所の方もいらっしゃって。「蔵前に(新刊の)本屋さんがなかったからうれしい」なんて声を聞くと、こっちまで幸せな気持ちになりましたね。
岩見:
そうですね。これまたありがたいことに、ご近所にあるギャラリー「TOKYO PiXEL.」さんが透明書店のことをすごく気にかけてくださっていて。
オープン日には祝花まで贈ってくださったんです。……蔵前にしてよかったなとうれしさを噛み締めました。
岡田:
SNSで来てくれたお客さんたちの反応もうれしかったです。「スモールビジネスを深く理解するために本屋をオープンした」というコンセプトが、しっかり伝わっていると思える感想もちらほらあって。
——わあ、いいですね。順調な滑り出しにということで。オープン日、4月21日の正午はなにか特別なことをされたんでしょうか?
岩見:
それが、とてもあっけなかったんですよ。ギリギリまで作業をしていて、ふと時計を見たら12時3分を指していました(笑)。気づけば開店時間を過ぎていた、というのが実際のところです。
岡田:
ぼくは、ちょうど買い出しに出ていたコンビニで12時を迎えました。
——えっ、ずいぶんあっさりした感じだったんですね。それじゃあつまり、皆さんで「せーの」みたいなこともなく?
岩見:
はい、ぬるっと透明書店はスタートしました。
完全キャッシュレスにするはずだったのに
——オープンの裏側には、さまざまなハプニングやアクシデントがあったとお聞きしていますが、具体的にはどのような事件があったんでしょうか?
岡田:
そうなんです。なんといっても焦ったのは、PayPayが使えなかったことでしょうね。PayPayを使うには審査に申し込む必要があるのですが、レジシステム経由で申し込むと通常より時間がかかるんです。
岩見:
あと、途中で審査が止まっていたのにも途中まで気づかなかったんですよね...
岡田:
以前準備号6話で、完全キャッシュレスにしていきたいとお話していました。が、PayPayはキャッシュレス決済の中でもかなりのシェアがあるので、PayPayが使えないと難しいだろう...…ということで、、急遽現金も扱うことになりました。
——現金を扱うとなると、金庫であったりとか備品も必要になってきますよね。
岡田:
おっしゃる通りで、急いで揃えましたね。そういった備品類もそうですけど、お釣りの小銭も用意しなきゃいけないし、それに伴ってセキュリティを考えないといけなかったり。あとは現金出納帳をつける必要も出てきました。
でも、現金を扱う大変さを経験することができるのも、それはそれでよかったかなと今は思っています。今後は様子を見つつ、完全キャッシュレスに移行するかどうか判断していく予定です。
——他に印象に残っているできごとはいかがでしょうか?
岩見:
ちょっと細かいはなしにはなるんですけど、持ち帰り用の袋の設定がうっかり抜けてたり、ですかね。
——そうか、レジ袋を有料にされたんですもんね。
岩見:
そうなんです。売り上げが発生するということはレジに登録しておかないといけない……、これは前日におこなった社内向けのテスト販売時に気づきましたね。
——ギリギリ間に合ってよかったです!
岡田:
テスト販売をしたことで、色々と問題点を洗い出すことができました。
透明書店は、店長の遠井さんがひとりで回していくことになるので、レジ対応をしているときに入り口のくらげモニターの案内はできないじゃないですか。
だから、そういった説明書というか張り紙が必要だぞ、となりまして。オープン直前に近くのコンビニで印刷したんですよ。
——なるほど、「オープン時間をコンビニで迎えていた」というのはそういうわけだったんですね。
岡田:
これまでFAXをなくそう、スリップをなくそうって紙を削減していく方向でおはなしをしてきたわけなんですけど、紙って柔軟性が高くて緊急時にとても役に立つんだなと、改めてその利便性に気づくことになりました。
身をもってユーザーの苦労を知った商品管理
——いろいろ苦労があったわけですが、そもそもこれだけの本を管理して並べること自体がきっと大変な作業でしたよね?
岩見:
そうですね。社内メンバーの力を借りて、なんとか棚を埋めることができました。
岡田:
最初はレジのシステムに登録してから店頭に出すようにしていたんですけど、どうしても間に合わなくて登録なしで本棚に並べることになったり、漏れてしまっているものもあったりして。
そうすると、後から売り上げを分析したり、利益を把握するのが難しくなっちゃうんです。freeeでは「先に販売フローをしっかり整えることで、後工程の会計業務も楽になります」ということを言っているんですが、今回その重要性を、ぼくたちが身をもって体験することになりましたね。
岩見:
やっぱり棚を埋めることの方が最優先になっちゃうんですよね。とりあえずレジだけ打ってあとから処理すればいいかみたいな。後追いでの参照作業の大変さを実感した今は、もっとがんばって全部の商品を登録しておけばよかったと後悔しています。
——その事前に登録できてなかった分の処理って、あとあとしっかり解消されるんでしょうか?
岡田:
はい、ちょうどさっき今日までの売り上げの洗い出しが完了したところなんです。
本の情報が入ってなくても売った金額はレジに残っているのでそれを参照したり。そもそもレジに登録していない本が売れたときは、メモを残す運用にしていたので、大変でしたけどほぼ全ての本の売り上げを算出することができました。
岩見:
ほんとうにさっき終わったばかりなんですよね。
というのも実は社内テスト時に売った本で、どうしてもわからない売り上げが1件だけあったんです。1600円の本で、ICカードで購入されてて、そのカードの下4桁の数字までわかっている。なのに、参加していた社内メンバーに聞いても誰も心当たりがない……。困り果てていたところに、ついさっき遠井さんが「すみませんぼくでした」と(笑)。
どうやら自分で買ったものだから忘れないだろう、あとあと手が空いたら処理したらいいかと、メモしてなかったそうなんですね。
——それは大どんでん返しでしたね。一安心できて良かったです。商品登録しておくことの大切さがよくわかりました。
岡田:
ありがたいことに毎日お客さんに来ていていただいて、その分どんどん本を入荷していくわけなんですけど。そういった新しい本たちを、いかに遠井さんひとりでスムーズに漏れなく登録できるか、試行錯誤している最中ですね。
壁にぶつかることも楽しいと感じる日々
——おはなしを聞いていると、なんだかおふたりが、苦労しながらも、とてもわくわくされているように感じました。
岡田:
そうですね。オープン週にイベントの実現が叶わなかったとか、直取引するリトルプレスの発注が間に合ってないとか、モニターのくらげに名前をつけられなかったとか……。やりきれなかったことは言い出したらキリがないんですけど、無事にオープンすることができて、とりあえずほっとしているというのが今の正直な所感です。
岩見:
幸いなことに、オープン前も今日までも致命的なトラブルはありませんでした。
でも毎日のように、この作業をもっとスムーズにできないかなとか、課題に気づくんです。例えば出版社さんから新刊情報が届くんですけど数が膨大すぎてすぐ埋まってしまう。そんなとき情報を整理してくれるサービスがあったら選書が楽になるんじゃないか、とか。
どうやってそういった壁を越えようかなとわくわくする自分がいて。これからどんどんfreeeのプロダクトに活かしていけたらなと思っています。
そんな透明書店で実施するサービス実験の様子も、また別の連載でお話ししてく予定なので、ぜひ楽しみにしていただけたらうれしいですね。
——1年近く追ってきた透明書店がついにオープンし、わたしもなんだか感慨深いです。お店に伺うたびに読みたい本に出会えるので、みなさんもぜひ透明書店に足を運んでいただけたらと思います。
オープン後もまた別の角度から透明書店を追っていく連載がスタートする予定です。どうぞお楽しみに。
◆取材・中前結花
ライター・エッセイスト。下北沢の書店巡りを日課にしている。著書にエッセイ集『好きよ、トウモロコシ。』(hayaoki books)など。
撮影:芝山健太 デザイン:Samon inc. 執筆・編集:株式会社ツドイ
お知らせ:note無料メンバーシップ「透明書店バックヤード」
透明書店をもっと身近に感じてもらくて、書店経営の裏話を語る無料のメンバーシップ『透明書店バックヤード』を開設いたしました!「参加する」ボタンを押すだけで、無料で気軽にメンバーになることができます。
記事では盛り込みきれなかった、書店経営の裏側を不定期Podcastでお届けします。
まるでバックヤード(従業員控え室)でくりひろげられるような愉快な内緒ばなしを、ぜひお楽しみください。