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freeeのバーチャルオンリー株主総会|後編:バーチャルオンリー株主総会のリアルな舞台裏

こんにちは!Corporate Governanceチームの岡田です。

前編に引き続き、freeeのバーチャルオンリー株主総会(VO総会)について共有します!

本noteを読むと分かること
本noteでは、前編・後編を通して、freeeが考えるバーチャルオンリー株主総会の利点や、バーチャルオンリー株主総会を運営する際の具体的な運営体制についてお伝えします!後編となる今回は、今年のバーチャルオンリー株主総会の運営の様子を具体的にお伝えします。
✅freeeはなぜバーチャルオンリー株主総会を選択したのか?(前編)
✅freeeが考えるバーチャルオンリーの利点とは何か?(前編)
✅当日の運営体制(後編)
✅スムーズな運営のための工夫(後編)


当日の運営体制

まず、当日の運営体制は以下の通りです。

運営体制

当日の運営に携わった社員は14名でした(参考:2022年にハイブリッド開催を行った際は約30人の社員が運営に参加)。なお、freeeでは、配信については外部委託せず、社内の技術チームが担当しています。

各担当の物理的な配置は下図の通りです。

当日の配置(水色は取締役、オレンジは社員、ピンクは社外の方)

必要最低限の人数のみスタジオに入り、第一事務局はスタジオ内の様子を見ることのできるコントロールルームにいました(スタジオの中と外はインカムで連携)。スタジオでは、議長の前にモニターを設置しシナリオを投影しました

前日までの準備

前日までに、事務局と配信チームのみのリハーサルを1回CEOの通しリハーサルを1回実施しました。また、通信障害に備えてバックアップ回線の用意や通信障害マニュアルの作成等も行いました。

初めて尽くしだった株主総会本番

さて、このように準備を整えて迎えた株主総会ですが、当日はこれまでにない「初めて」の出来事も多くありました。

最も緊張感があったのは、配信中に総会システムを通じて「動議」のご提出をいただいた時です。加えて、過去最多の当日質問を頂いたり、特定の取締役を回答者に指名いただいたりと、例年よりも株主さまとの対話がとても充実したものになったと感じました。

スムーズな運営、3つのポイント

株主さまとの対話が充実した分、運営側の対応は目まぐるしかったのですが、総会の後、弁護士の先生などから、「動議や質問への対応がスムーズで素晴らしかったですね」と嬉しいフィードバックを頂くことができました。

そうしたフィードバックも踏まえて、具体的に良かったと思う運営上のポイントを3つ共有します。

①第一事務局がシナリオを直接編集する

配置図でもお示しした議長の前のシナリオモニターには、シナリオが書かれたドキュメント(編集可能な状態)をそのまま映し出していました。

シナリオモニターのイメージ画像。シナリオが記載されたGoogleドキュメントがパソコンの画面に映し出されている。
モニターに移したシナリオのイメージ(議事の進行に合わせてスクロール)

また、第一事務局の社員もこのドキュメントを開いており、議事の進行に合わせてシナリオが柔軟に編集できるようにしていました。

このため、動議を頂いた際も、このシナリオに追記することで動議の内容や対応方針を議長に共有できました。議長もそれを読んですぐに状況を認識し、議事の一時停止などで株主さまをお待たせすることなく、落ち着いてご対応することができました
※今回の動議は、弁護士の先生とご相談の上、ご意見として承りました。

また、質疑応答についても同様に、当日質問が来たら質問の内容と参考情報をシナリオの中に書き加えていきました。

②第二事務局も当日質問をリアルタイムで把握する

第二事務局は、第一事務局の情報収集をサポートするチームで、CFOやCBIO*、IR担当チームのマネージャーが待機していました。スタジオとは別の部屋で配信を見ており、第一事務局とはSlackで繋がっていました。
*
Chief Backoffice Innovation Officer、バックオフィスの部署を統括する役員

昨年までは、第一事務局が必要に応じて第二事務局に質問の内容を連携していたのですが、今年はVO総会システムに第二事務局が直接ログインし、当日来た質問をリアルタイムで把握できるようにしました。

これにより、第一事務局から連絡する前に第二事務局から「〇〇の方針で答えるといいのでは?」といったアドバイスが来たり、第一事務局からも、質問内容を伝えることなく効率的に相談したりできるようになりました。

特に今年は例年よりも当日質問が多く、この新たな運用にとても助けられました。

③全員ができるだけ近くに座る

動議などのイレギュラーなシチュエーションでは、弁護士の先生と対応方法をご相談する必要があります。

今回の動議についても、どのようにお応えすればよいかを第一事務局(運営チームの責任者含む)が弁護士の先生の隣に座ってご相談しながらその場でシナリオを修正していきました。

freee以外でも、運営チームが少人数の場合は必然的に近くに座ることになるとは思いますが、関係者が物理的に近くにいることのメリットを改めて感じました。

このような工夫をし、株主さまから時間内に頂いたご質問に全て回答することができました。

AI活用にもチャレンジしてみたものの..

実は、当日は質疑応答にAIも活用したいと考え、想定問答などをAIに読み込ませていました。しかし、上記の通り質問が次々とくる中で、AIが必要な情報を集め、それを人間が精査するスピードより、第二事務局のアイデア出しのスピードのほうが速いのもあって、あまり活用できませんでした。

実際の株主総会の模様はこちらから

バーチャルでのコミュニケーションで感じたこと

今回、私は初めてVO総会を担当したのですが、実際に携わる前は、バーチャル開催でのコミュニケーションは、リアル開催に比べて希薄になってしまうのではないかと感じていました。

実際にVO総会を運営してみて、確かに株主さまのお顔が分からない等、距離を感じる面もありましたが、コミュニケーションのハードルとしてはバーチャルのほうが格段に低いと感じました。

特に、最近は投資をする方も多様化しており、株主総会で質問することに慣れていない方などもいらっしゃると思います。

株主総会の会場で発言するというと緊張する方も、バーチャル開催の場合は自分のスマホで配信を見て、テキストで質問することができます。こうしたバーチャルならではの「手軽さ」を生かせば、より多くの株主さまと多様な観点から対話ができ、より価値のある株主総会になるのではと感じました。

質疑応答後に株主さまから感謝の言葉

本来の「対話」とは異なるかもしれませんが、今回のVO総会でとても印象深かったことがあります。それは、あるご質問にお答えした後に、株主さまから「ありがとうございます」と質問受付フォームにご返答を頂いたことです。

総会中に頂いた株主さまからのお礼のメッセージ(VO総会システムSharelyの画面)

本来のフォームの目的とは異なる使い方ではありますが、従来の株主総会の形式的なやりとりでは感じづらい、バーチャル開催ならではの株主さまとの1対1のコミュニケーションができたように感じ、とても心に残りました。

おわりに

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

株主総会は決まり事も多くあり、新たな試みは法的なリスクもあることから、前例踏襲になりがちだと感じます。

一方、そうしたルールを守ったうえで、株主さまと企業、双方にとって最も価値のある総会とはどんなものなのか考え、アイデアを出し合うと、運営チームにとってももっとやりがいのある仕事になるのかもしれません。

freeeの株主総会もまだ進化の途上ですが、こうした思いやアイデアを発信することで、株主総会の準備が少し楽しみに思えたり、他のアイデアが生まれる種になったりするといいなと思います。

最後に、少しでもこの記事をお楽しみいただけたら、ぜひ「スキ❤」押していただけると嬉しいです!ありがとうございました。