尖った人たちが教えてくれた、私のカスタマーサクセス論
はじめまして! freee DEIアドベントカレンダー2024 13日目(13日の金曜日)を担当するshimichiです!
23年11月、freee人事労務のカスタマーサクセス(CS)メンバーとしてフリー株式会社(以下、「freee」と表記。)にJoinし、カスタマーサクセス事業部のサクセス企画・OPS JM(ジャーマネ:freee におけるマネージャー)として、CS業務の最適化や主要成果指標の設定とそのモニタリング体制の構築などを行ったりしています。
今回のアドベントカレンダー全体のテーマは「私とDEI」。
なかなか抽象的で、何を書けば…と小一時間ほどビールを飲みながら悩みましたが、ここでは、カスタマーサクセスな私がこれまで出会った「尖った人たち」との経験を通じて学んだこと、そして「サイエンス」であり「アート」でもあるカスタマーサクセスとDEIの結びつきについて徒然なるままに記そうかと思います。
「尖った人たち」。
freeeの中では比較的、というかだいぶ長く生きている身としてビールを飲みながら人生を振り返ると、その一人ひとりとの出会いが、今の私の価値観や仕事観を作り上げてきたのかなーなんて思います。
カスタマーサクセスとの出会い
まずは、なぜ私がカスタマーサクセスという仕事を選んだのか。それは、私の座右の銘のひとつに直結してきます。
「あれを見よ 深山の桜 咲きにけり 真心尽くせ 人知れずとも」
詠み人知らずのこの句は、「誰も見ないような深い山でも桜がきれいに咲いているではないか。桜は人々に見てもらうために咲いているのでは。他人が知ろうと知るまいと、真心を尽くそう」という意味(たぶん)。いつの頃からこの言葉を追いかけているのか、そのきっかけは忘れてしまいましたが、不思議と心の奥にずっと残っている言葉です。この考え方は、幼い頃から私の生き方の根幹になってきました。
この句が語る「真心」とは、見返りを求めずに全力で何かをやりきること(たぶん)。その姿勢は、私にとって常に「誰かのために働く」ことと結びついていました。そして、誰も見ていなくても顧客の成功を信じて支えるカスタマーサクセスという職種に出会ったとき、まさにこの句を日々実践する場として「これこそが自分に向いている仕事だ!」と勝手に感じたのです。
しかし、今に至るまでの道のりは決して直線ではなく、さまざまな経験や出会いが、この価値観を作るきっかけとなりました。
郷に従った社会人のスタート
私のキャリアの始まりは塾・予備校を運営する大手教育グループでした。いわゆる「古の文化」が根付いた職場です(諸説あり&個人の感想です)。働き始めた当初は、いかに「社会人らしく振る舞うか」が大切で、指示を待つ、上司の決裁を得る、そして慎重に行動する。ホームページの誤字を見つけたとき、それを修正するための書類を手で書いて、ハンコ捺して、上司のハンコもらって、広報に連絡して、情シスに連絡して、別ビルにある情シスに書類を持っていって、真夏にはタオルを肩からかけたオジさまが大汗をかきながら情シス押印済みの書類を持ってきてくれて、そこから部長・本部長のハンコもらって、別ビルにある広報に書類を提出する。そうすると数日後に文字が直っている(※イメージ)。そんな世界にひっそりと住んでいました。
ぐぬぬ…と感じることもあるかと思いますが、そこに住んでいるとその暮らしが当たり前になってしまうもの。社会人を存分に発揮し、郷に入っては郷に従っていました。
いま振り返ると、自分の視野を自分で狭めていたなと感じます。多様な視点や柔軟な発想が欠けていると、個人としての進化は止まってしまう。この経験が、のちにDEIを考えるきっかけのひとつになったのかもしれません。
ベンチャー文化との出会い
そんな私に転機が訪れました。
ちょうどEdTech(教育×テクノロジー)が注目され始めた時期があり、オンライン家庭教師や学習記録アプリといったスタートアップ企業からの提案を受ける機会が増えていきました。
ここで出会ったのが、ベンチャーならではの「尖った人たち」。彼らの行動や発想は、私にとって衝撃的でした。たとえば、「教室のココとアソコとアソコにチラシを20枚ずつ置くので、生徒が1時間ごとにどのくらい取っていったかを記録していってほしい」という依頼。正直「そんなの無理や!めんどい!」と思いましたし、当時の私はそのスピード感や思考方法にだいぶ困惑し、せっかくの提案を断ることもありました(というか、ほぼ断ったような。ごめん)。
しかし、彼らにとっては、それが一人でも多くの生徒にサービスを届けるための手段だったのです。彼らの『まずやる』精神と行動力・姿勢から、サービスを広めるための最善策を模索し続け、目的達成のためにどんな手段でも試してみるという情熱に強く影響を受けました。そして、この「まず行動する」という考え方が、その後私が出向することになったベンチャー企業での文化 --「許可より謝罪」--に通じる価値観となっていきます。
「許可より謝罪」と、 誰が言ったかではなく何を言ったか
その後、サブスク型オンラインサービスを提供するベンチャー企業に出向し、本格的にベンチャー文化とカスタマーサクセスに向き合うことになります。
当時はまだ「カスタマーサクセス」という言葉もほとんど知られていませんでしたが、途中でやめてしまう人や継続できない人が少なくない自社のオンラインサービスにおいて、顧客に寄り添い成功へと導くアプローチが求められる点は、まさに現在のカスタマーサクセスの考え方そのものでした。この仕事こそが、私にとって顧客と伴走する喜びを教えてくれた原点となったのです。
また、ここでの社長は業界きっての「尖った人」でしたが、知識と時代の流れを誰よりも敏感にキャッチし、「許可より謝罪」(※)を信条としていました。この言葉は、「許可を待って行動が遅れるくらいなら、まずやってみて、後で謝罪すればいい」という意味(たぶん)。その言葉には、行動力と結果を重視するベンチャー文化が体現されていました。
そして何より驚いたのが、彼は「誰が言ったか」ではなく「何を言ったか」を重視していたこと。たとえば、グループの代表がAと言い、インターンがBと言ったとき、Bが正しければ絶対にそのインターンが言ったBを採用する。そこには男女の差なんてないし、役職も、年次も、学歴も、経歴ももちろん関係なし。これほど公平な判断をする文化に触れたのは初めての経験でした。
こうしたベンチャー文化の中で学んだ「行動力」と「公平性」、そしてオンラインサービスの継続利用を促進するために顧客の成功を追求した経験は、まさに現在のカスタマーサクセスの核となる要素でした。顧客ごとの課題に迅速かつ柔軟に対応し、最善を基準に判断する。これらの教えは、私がカスタマーサクセスを「サイエンス」であり「アート」でもあると考える土台となっています。
freeeで実践するカスタマーサクセス:多様性が生むサイエンスとアート
昨年、カスタマーサクセス部門のメンバーとしてfreeeに入社しましたが、ここには私がこれまで出会った「尖った人たち」の哲学と、DEI(多様性、公平性、包括性)の考え方が自然に溶け込んだような文化があります。
カスタマーサクセスという職種は、一言で言うと「サイエンス」と「アート」の両方を必要とする仕事です。「サイエンス」の部分では、データやプロセスを活用し再現性のある方法で顧客の成果を導くことが求められ、一方で「アート」の部分では、担当者自身の経験や人間性を活かし、顧客一人ひとりに寄り添いながら、その人にとっての最適な成功を描き出す力が必要です。
特に「アート」の要素では、顧客ごとの状況や課題に深く向き合い、共に解決策を模索するプロセスが重要です。その中で、多様性を受け入れる姿勢が、新しい視点や可能性を生み出し、顧客との信頼関係を深めていく原動力となります。
これまで出会ってきた「尖った人たち」から学んだのは、「多様性を理解し受け入れることで、自分の価値観が広がり、それが新しい創造性や柔軟性を育てる」ということ。この広がりこそが、カスタマーサクセスにおける「アート」に色を与え、顧客にとって最適な価値を提供する力になります。
freeeでは、データドリブン(※)なアプローチが「サイエンス」を支え、年齢や経験、専門性の異なる多様なバックグラウンドを持つメンバーたちが「アート」を形作っています。DEIの精神がチームの中に自然と根付いているからこそ、それぞれの経験や知識が融合し新たな視点が生まれ、結果としてサイエンスとアートが共存するカスタマーサクセスが実現できているのではないでしょうか。
これからも「尖った人たち」からの教えを胸に、DEIの精神を実践しつつ、たまには謝罪力も発揮しながら、真心を持って顧客の成功を支え続けたい…と、ビール片手に改めて思ったのでした。おしまい。
freee DEIアドベントカレンダーはまだまだ続きます!
14日目となる明日は briさんが担当です。どうぞお楽しみに!