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freee法務の本棚大公開ー契約実務編ー

初めましての登場です!法務・リスク管理部に所属する中島です。

noteを書いた中島一精のプロフィール画像。法務・リスク管理部法務チーム。2023年4月に法律事務所からfreeeへ転職。「皆でおいしい飯を食べる」を理念として、五反田の某焼き肉店をこよなく愛する法務パーソン。

法務チームからは実際にfreeeの法務パーソンが使っている書籍を紹介します!

【freee法務の本棚大公開】のコンセプト
『他の会社の法務部ではどんな書籍を使ってるんだろう?』
『どういうときにどんな書籍を使えばいいんだろう?』
と疑問に思っていたので、freeeから発信することで参考にしていただいたり、他の書籍をご紹介いただける機会にならないかな、と思いこのnoteを書いています。
今後、本棚大公開記事では、以下のラインナップを予定しています!
✅契約実務編👈今回はここ
✅利用規約・個人情報編
✅商事法務編
✅労働法務編


1.尊敬する弁護士の言葉『書籍は投資』

尊敬する弁護士の一人から言われた言葉です。
その弁護士は、膨大な『知識』を持っていて、『知識』を得るための『書籍』を「ここは図書館か?」というくらいに保有していました。
そこから得られる知識を使って、依頼者の質問にテンポよく答えて信頼を獲得しているのを横で見ていました。そこで、私も弁護士としてのスキルを広げるために書籍に投資をしてきました。

AIの活用も今後増えるものの、結局考えるのは人間で、考える力があってなんぼ、リーガル相談の相談者のハートをつかんで事業を加速させることが法務パーソンの役割だと考えています。

それでは、実際にfreeeの法務パーソンの本棚を覗いてみようと思います。

2.入門段階で読んでおきたい導入本

『企業法務1年目の教科書 契約書作成・レビューの実務』幅野直人(著)中央経済グループパブリッシング

【おススメ度】 ★★★

どういう本?
「企業法務1年目の教科書」とあるように、契約に関する基本的な知識から契約書を実際に修正する際の修正方法、契約書のひな形まで載っています。

どういうときに使う?
法務経験のない又は浅いメンバーがいる場合に、「契約実務とは」というお作法を身に着けるために一読することは必須の書籍です。
他方で、法務経験のあるメンバーでも忘れていることはあるので初心を取り戻すときにも有益な内容になっています。
freeeでも実際にメンバーが頻繁に参考にしていますし、私も購入して一通り読んで初心に戻りました。

『図解即戦力 契約書の読み方と作成がこれ1冊でしっかりわかる本』太田 大三他(著)技術評論社

【おススメ度】 ★★☆

どういう本?
位置づけとしては、幅野先生の書籍と同趣旨のものです。
見開きで左が解説、右が図表や絵なので、具体的に想像しやすい、読みやすいのが本書の特徴。
個人的にはここまでわかりやすく書かれたものはないのでは!?と思っているのでおススメです。

どういうときに使う?
これも幅野先生と同様に契約実務のお作法を身に着けたいときに利用するのがよいと思います。
幅野先生の書籍と内容が被るところもあるもありますが、視覚的な情報としては本書の方が見やすいので、使い分けながら使用すると理解が進みやすいです。
freeeでは法務経験ゼロのメンバーにはこの書籍を読んでもらって実務に取り組んでもらっています。

3.常に横に置きたい書籍たち

『契約書作成の実務と書式 -- 企業実務家視点の雛形とその解説』阿部・井窪・片山法律事務所 (編集)有斐閣

【おススメ度】 ★★★

どういう本?
契約実務に携わる方であればだれもが知る超有名な書籍です。
他でも多くの方が紹介しているので、もはや今更感はありますが、一通りの契約形態で契約書のひな形が載っているので、いつでもどこでも(初版に比べて太ったのでどこでもではないか)参考にできるものだと思います。
迷ったらこれ!です。

どういうときに使う?
契約審査をしていて、「これどうだったっけ?」「条項例他にないかな?」などちょっとしたことでも気になることがあれば立ち戻って確認できます。
freeeでも多種多様な契約類型があるので、よくわからない取引だなと思ったらヒントになる契約類型がないかを探すときに必ず手に取ります。

『新民法対応 契約審査手続マニュアル』愛知県弁護士会 研修センター運営委員会 法律研究部 契約審査チーム (編集)‎ 新日本法規出版

【おススメ度】 ★★☆

どういう本?
民法改正時に発売された書籍で、「契約作成の実務と書式」同様に一通りの契約類型でひな形が載っているものです。
チェックリストもついているので、どの部分に着目すればいいかも一覧されていて参考になります。
出版年月日が少し古いかもしれませんが、「契約作成の実務と書式」と並んで有名な書籍ですね。

どういうときに使う?
「契約作成の実務と書式」と「契約審査手続マニュアル」を比較しながら、契約審査を行うとより豊富な条項例を見ながらチェックができます。
私も契約審査の際に二冊を並べて比較しながら確認することがあります。
また、自社ひな型を作成する際に、チェックリストも作るとなったら、本書のチェックリストは効果を発揮します。

4.じっくり腰を据えて考えるときに心強い書籍

『類型別 企業間取引契約書作成のポイント: 条項例にみる利害調整とリスク対策』飯田 浩隆(著)中央経済グループパブリッシング

【おススメ度】 ★★★

どういう本?
帯にもあるように「契約条項のロジック」が懇切丁寧に解説されている書籍です。
契約実務において、自社ひな型があれば差分判定が最初に行う作業になると思いますが、対象の条項が本質的にどのような意味合いを持っていて、実務上どういう場面で活きるか、をリアルに体験できるため、実践知としての効果はバツグンです。

どういうときに使う?
自社ひな型を作成するときや相談者からの質問で条項の本質的な意味を考える際に使用しています。
契約実務に慣れてきたころに、この条項って実際どういう場面に使えるの?という視点で読むと学びが非常に多いものだと思います。
個人的にはここ最近で読んだ契約実務本で一番感動しました。

『業務委託契約書作成のポイント』近藤圭介 (編著)中央経済社

【おススメ度】 ★★☆

どういう本?
タイトルのとおり、業務委託契約書に特化した書籍です。
ひな型はもちろん、場面ごとの条項案が提案されていて、条項集としての役割も担っているものです。

どういうときに使う?
私が使用するときには、条項例を他に見たいとき(特に損害賠償条項のような一般条項)に使用しています。
また、各条項毎に解説が入っているので、使う場面を考えながら適切な選択ができるため、相手方からカウンターが届いて、再カウンターを打つ際に参考になるものだと思います。

5.ITビジネスやるならこれでしょ!

『ITシステム開発「契約」の教科書』池田 聡(著)翔泳社

【おススメ度】 ★★★

どういう本?
システム開発契約のイロハを教えてくれる一冊です。
開発業務の流れを体感しながら契約書の条項を検討することができるもので、開発契約を作るときにはこの書籍を大いに参考にしました。
SaaSビジネスを提供するfreeeとしては、開発を外注する場面で、重厚な契約書を作成することが求められます。そうすると、そもそも論として、開発契約に関する基礎知識を身につける必要もあるので、本書のように丁寧に説明されたものは非常に効率よく理解と実践を行うことができます。

どういうときに使う?
開発契約を初めてdraftする、そもそも開発業務って何、というときに最初に手に取る書籍としては最も適切な書籍だと思います。
下記のとおり、超有名な書籍もありますが、理解から実践に移しやすいので、開発契約を作るときには必須と考えています。

『ITビジネスの契約実務』伊藤雅浩他(著)商事法務

【おススメ度】 ★★☆

どういう本?
上記の書籍と異なり、「開発」という側面に限らず、ライセンス契約などITビジネスに関わる契約類型が載っています。
実務書籍としての分厚さはありませんが、理論面の解説も十分になされています。
freeeもITビジネスを行う中で、販売店契約も関係するため、その理論面ではこの書籍の解説が一番腑に落ちるものでした。
ITビジネスは、物理的に存在する商品を販売する者とは異なるため、「売り方」の面で法的な位置づけをしっかり考える必要がありますが、この書籍で理解が進みました。

どういうときに使う?
ITビジネス全体に使用できるため、迷ったら一旦この書籍に頼る、というのがよいと思います。
ひな形としても充実していますが、かなり重厚なつくりになっているので、自社のビジネス規模、開発規模に合わせてアジャストして使用することをおススメします。

6.普段はあまり見ない英文契約のお作法本

『はじめてでも読みこなせる英文契約書』本郷 貴裕(著)明日香出版社

【おススメ度】 ★★★

どういう本?
英文契約書をチェックすることはあまりありませんが、そもそも英文契約書って何なん?を解決してくれるのがこの書籍の大きな役割だと思います。
読み方からお作法まで丁寧に解説されているの最初に取る一冊としてはこれ以外ないと考えています。
(助動詞の使い方って特殊すぎるでしょ!!と思っている方には感動的な書籍です)
どういうときに使う?
英文契約書のレビューが来たけどとりあえずどこから手を付けたらいいか分からないというときには、この書籍がおススメです。
私は前職でこの書籍を見ながら英文契約書をレビューしたときに、当時の依頼者からこの英語力なら安心だ、と言われました笑

『頻出25パターンで英文契約書の修正スキルが身につく』本郷 貴裕(著)中央経済社

【おススメ度】 ★★☆

どういう本?
上記の書籍からの応用版です。
日本語の契約書と同じで一定のフレームワークがあるため、そのフレームワークをパターンとして認識するのに最も適切な書籍です。

どういうときに使う?
日本語の契約書もある程度経験値がついたらポイントが分かると思います。それと同じように、この書籍は英文契約書におけるポイントを見るときに非常に役に立つもので、英文契約書を修正するときに上記書籍と一緒に参考にすべき書籍です。
(転職活動時に英文契約書のテストがあったのですが、本書を読むことでポイントを抑えて臨むことができたので、私にとっては救世主です)

7.この書籍で経験値を稼ぐ!

『企業における裁判に負けないための契約条項の実務』阿部・井窪・片山法律事務所 (編著)青林書院

【おススメ度】 ★★★

どういう本?
「契約書作成の実務と書式」を執筆した法律事務所が発売した書籍です。
契約実務に特化した書籍で、経験値を積むにはキングスライム並みの効果があると考えています。

どういうときに使う?
freeeでは、実際に本書を使用して勉強会を毎週開催しています。
論点とそれに対する解説が充実しているため、法的三段論法を身に着けるためにも非常に効果があります。
具体的に行っている方法は、別途noteにするかもしれませんが、原告側の請求内容から要件を立て、その中で争点になるものを特定したうえであてはめして検討するという形で開催しています。
法務パーソンとして法的三段論法は当たり前ですが、フレームワークがあるので、そのフレームワークを使いながら本書を実践することで、実際のトラブル事例の疑似体験ができると考えています。

8.おまけ(今後仲間に入れたい書籍)

『実務必携 契約書チェックマニュアル』弁護士法人飛翔法律事務所(編集)商事法務

気になるポイント
X(旧Twitter)で見かけたもので、契約審査の書籍で話題になっていたため、「チェックマニュアル」を策定したりするのによいのではとワクワクしています。

『経理・財務担当者のための契約書の読み方』EY新日本有限責任監査法人 (編集)中央経済グループパブリッシング

気になるポイント
「経理・財務担当者のための」とありますが、逆にいえば、法務からすると「経理・財務」がどこを気にしているのかを確認できるのではないかと思っています。
特に法務ばっかりやっていると会計系の知識がおろそかになってしまいがちですが、お金が動く=税金が発生する可能性があるため、経理観点でのレビューは法務パーソンの必須のスキルだと思っています。
その意味で、この書籍は非常に勉強になるのではないかと思い期待大です。

以上、長くなりましたが、契約実務編の本棚大公開でした。これら以外にも世の中にはたくさんの書籍があると思いますが、実際にfreee法務パーソンが使用している書籍なので、ご参考にしていただければ幸いです。
この記事をご覧いただいた皆様からも「この書籍使ってます」等のご意見をいただけますと幸いです。

(法務・リスク管理部 中島)