【売上135万円達成!】オープン12ヶ月目にして過去最高。黒字化まであと少し!
2023年4月、東京・蔵前に開店した「透明書店」。本連載『お金まわり公開記』では、毎月の売上や経費などを赤裸々にお伝えしています。今回は、3月の実績に注目。オープン1周年を4月に控え、実績はどう着地したのかをお伺いします。聞き手はライターの安岡晴香さん。透明書店の代表を務める岩見俊介が、現状をありのままにお話しします。
過去最高売上の135万円を達成!
――オープン1周年にあたる4月が、目の前に迫ってきました。3月の売上はいかがでしたか?
岩見:
売り上げは、1,358,612円。なんと、過去最高を記録しました!売上総利益もトップで、営業利益は2023年7月に続く2番目という実績です。とはいえ黒字化には至っておらず、損失は約35万円となりました。詳しい数字は、3月末時点の損益計算書(P/L)をご覧ください。
好調だった主な理由は、「TOKYO CREATIVE SALON 2024」という催事に参加したこと。それからポップアップ、イベントスペースの収入があったことです。後ほどお話ししますね。
岩見:
主要項目だけ抜き出してみます。
岩見:
ジャンルごとの売上実績と月次目標はこちらです。
――過去最高値更新、おめでとうございます! お客様の数も多かったですか?
岩見:
2月も少なくはなかったのですが、3月は季節的なところもあって、より増えた印象です。桜の季節だからか外国人観光客が増えたり、春休み期間だったので、家族連れがちらほら来てくれたりもしました。
――書籍の展開で工夫したことは?
岩見:
先月に引き続き、リトルプレスの取り扱いを増やしました。店内入口横の棚や、中央に置いたテーブルでまとめて展開しています。珍しいからか、足を止めてくださる方が多いです。「透明書店はリトルプレスが充実している」という印象を、これからも伝えていきたいと思っています。
「TOKYO CREATIVE SALON 2024」でリトルプレスの魅力を発信
――3月中旬から、有楽町の阪急メンズ東京さんでイベントをやっていたそうで。
岩見:
はい。3月の13〜26日に行われた「TOKYO CREATIVE SALON 2024」に参加しました。「東京を世界一のクリエイティブシティに」というコンセプトの祭典で、同じ時期にいろいろなエリアで、ファッションやデザインに焦点をあてた企画が開かれました。当店が参加したのは、有楽町エリア。阪急メンズ東京さんから、ぜひ参加してくれないかとお声掛けをいただきました。
阪急メンズ東京さんはこれまで、本を扱うということ自体をあまりやってこなかったそうなんです。そこで、どこか面白い書店と組めないかと探した結果、透明書店を見つけてくださいました。IT企業が書店をやっていること、テクノロジーなどの実験をしていることに組み合わせの意外性を感じ、興味を持ってくださったみたいです。
――どんな展示をしたのでしょうか?
岩見:
透明書店らしい企画ってなんだろう……と考えた結果、リトルプレスをより広いお客様に届けたいと思いました。リトルプレスは、いわば、個人が自分のクリエイティビティを発揮する場。そこで、“偶然出会える「本」と「感性」”というキャッチフレーズで、阪急メンズ東京さんの売り場にリトルプレスを並べてもらったり、カフェのカウンター席やレジ付近に、気軽に手に取れるように置いてもらったりしました。
また、リトルプレスのそばで、透明書店のオリジナルグッズも展開していただきました。さらに、全3回のトークショーも実施。最大10席の会場だったので、透明書店よりも規模としては小さいですが、合わせて20名ほどのお客様に来ていただけました。リトルプレスの売上は40冊ほど。イベントの参加者が、多くご購入してくださった印象です。
――売上40冊というのは、すごいですね。
岩見:
率直に言うと「思ったより売れたな」という感想です。内心、リトルプレスを百貨店に置いてもスルーされてしまうかも……という不安を抱いていたので、しっかり売れてほっとしました。リトルプレスは、世間一般に売れているものとは一味違う、内容も形も特殊な本。それが百貨店にいらっしゃる感度の高いお客様の目に新鮮に映ったのではないかと想像しています。案外、リトルプレスと百貨店は親和性が高いといえるのかも。書店じゃないところで本が売れる可能性に気づけたのは、意義深い発見でした。このポップアップをきっかけに透明書店を知って、リトルプレスにも興味を持ってもらえたのではないかと手応えを感じています。
「ベストセラー本のイベントなら人が集まる」は幻想……?
――イベントについてもお伺いしていきます。4月の実施回数は、全5回。特に印象に残ったものは?
岩見:
3月7日に行われた「-もう一度考える『経営の本質』- 『世界は経営でできている』刊行記念イベント」が印象的でした。1月に発売された書籍『世界は経営でできている』(岩尾俊兵 著/講談社刊行)の刊行記念イベントです。
普段透明書店では、新書のイベントはあまり行わないのですが、今回は新刊の発注候補タイトルを見て「面白そう」と思い、イベントの実施をこちらから打診しました。大反響のベストセラーということもあり、ダメ元での依頼だったので、快諾いただけたときはうれしかったですね。当店がスモールビジネスを応援する書店で、経営の色がちょっとある点に興味を持ってくれたのかもしれません。
――当日の盛り上がりはどうでしたか?
岩見:
著者さん、編集担当の方の協力もあり、たくさん告知をした上で当日を迎えました。結果、会場参加者が13名、オンラインが14名の計27名。イベントの内容も良かったし、ドリンクも売れたし、ここで本を買ってくださった方も多く、売上的には成功です。ですが個人的には、もっと集客を頑張りたかったなと思っています。
岩見:
というのも、昨年10月に行なったドン・ノーマンさんの著書の邦訳出版記念イベントは、参加者がオンラインも含めると104名で、かなり盛り上がりました。それだけの人が集まったのは、相当売れている本だからだと理解していたんです。その意味では、今回もベストセラー本ということで、同様の客数を期待していたのですが……。売れてる本だからといって、部数に応じた集客が必ずしも叶うわけではないんだなと学びました。書籍や著者さんに依存せず、透明書店からできる仕掛けは何かなかったのか、もっと大規模にやるにはどういう働きかけができたか、どうブラッシュアップすればよいのか。まだまだ考える余地があるなと思っています。
――冒頭で好調の要因として挙げていた、ポップアップ・イベントスペース の実績についても教えてください。
岩見:
ポップアップとしては、やちむんと服と雑貨のお店『Paddle』 さんの商品を展開しました。横田屋窯の陶器などを揃え、お店の雰囲気が一気にオシャレになりましたね。購入してくれるお客様もたくさんいて、売上につながりました。
またイベントスペースでは、近隣にある株式会社バンダイさんの写真部の企画展を実施しました。年末のイベントであるバンダイ社員の方と知り合い、そこからご縁がつながったかたちです。バンダイ写真部の皆様が撮った素敵なお写真をパネルにして展示し、壁に飾りました。また、せっかくだからとfreeeの写真部の展示も一緒にさせていただき、思わぬコラボレーションも実現。バンダイ写真部の皆さんは、レンタルスペースを懇親会にも使ってくださったので、ドリンクの売上も伸びました。
――ご近所の縁、いいですね。続いて販売管理費を確認します。
――珍しく「広告宣伝費」という項目が入っていますね。
岩見:
「TOKYO CREATIVE SALON 2024」のために、ショップカードを制作しました。透明書店の特徴や思いをまとめた、写真入りの小冊子です。お店の魅力をわかりやすく伝える手段として、今後も活用します。
ほかに特にイレギュラーな動きはありませんが、今月は物の破損が数件ありました。。道路沿いに置いてある「本」と書かれた白い看板の端が、気づかぬ間に強風で壊れていたんです。今は白いテープを貼って割れた隙間を埋めていますが、買い替えも考えなくてはなりません。あと、レジまわりでは、タブレットをつなげるコネクタの部分が壊れてしまい、うまく接続できなくなりました。買い替えるとなると3万円くらいするので、今は代わりに4,000円のカードリーダーを買って、簡易的な決済方法でしのいでいます。この金額が消耗品に入っています。
達成率145%。棚貸し事業のクラウドファンディングは絶好調
――では、棚貸し事業の進捗はいかがですか?
岩見:
3月22日に、クラウドファンディングが終了しました。支援者は55名、金額としては87万円を集めることができました。初期目標の60万に対して、達成率145%という実績です。早々に100%を達成したこともあって途中で目標を120万に伸ばしましたが、それは達成ならず。でも、これだけご支援いただけて、本当にありがたい限りです。
人気だったリターンはやはり、棚主になれるプラン。55名のうち38名がこのプランで申し込んでくれました。棚貸しで売れた本の売上から10%は、透明書店の取り分としていただくかたちになります。売上が少しでも伸びたらと期待しています。
――開始はいつになりそうですか?
岩見:
支援者の方には、4月中に改めて案内を出し、棚の設置に向けて動き始める予定です。正式に開始するのは、5月からになると思います。本当は4月の上旬にもスタートできたらと思っていたのですが、実際に準備を始めるとどんどん課題が出てきて、後ろ倒しになっていますね。
たとえば、以前の連載でもお話ししましたが、棚主さん同士が同じ本を置いていたり、透明書店にもその本があったりすると、誰の売上なのかがわからなくなります。そこで、別でバーコードシールを発行し、あらかじめ書籍に貼りつけておくという対策を考えました。このように、事前にやっておくべきことが思った以上にたくさんあって。実務的なオペレーションの部分でも、意外なところに壁があったり……このあたりの話は、棚貸し事業に関するリアルな経験談というかたちで、note読者の皆様に共有したいと思っています。
――ぜひ別途取材させてください。最後に、調子がよかった3月の振り返りと、4月に向けた意気込みをお願いします。
岩見:
3月は好調でしたが、細かく見ていくと、売り上げが1日で1件しかないという日もありました。。毎日どんどん上向きになっているというわけではないので、初心を忘れず、気を抜かずにやっていきたいです。
4月は、1周年を迎える月。イベントや企画がいくつも用意されています。いよいよ「単月黒字化」を見せられるタイミングではないかと思っているので、頑張らなくては。ただし、数字を獲得したいのはもちろんですが、同時に、やりたいことを突き詰める楽しさを手放したくないのも事実。あまり一喜一憂はしないように、「自由な経営」を続けながら売上も安定させられる……そんな理想像に向けて、これからも試行錯誤を重ねていきます。
透明書店のあゆみ
3月の振り返りメモby遠井店長
3月は売上過去最高ということで、お客様に感謝の気持ちでいっぱいです。来月で、ついに透明書店は1周年。現在は、イベントや展示に向けて準備を進めている真っ只中です。みんなで楽しく周年をお祝いできることが、今から楽しみです。4月こそ、初の黒字化を目指したい……! 1周年を迎える透明書店に、引き続きご期待ください。
いよいよ迎える1周年。好調の波に乗ったまま、初の黒字化を達成できるのか?4月の「お金まわり公開記」もお楽しみに!
★日々のお金の動きや出来事をより細かく拾うために、店長遠井が毎日つけている営業日誌を公開する連載「透明書店店長・遠井の透明日報」がスタートしました! ぜひご覧ください。
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