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【内装費120万円】書店の一区画をみんなでつくる「棚貸しスペース」に

2023年4月、東京・蔵前に開店した「透明書店」。本連載『お金まわり公開記』では、店舗名の“透明”の言葉通り、売上や経費をありのままにお伝えします。初めて迎えた年末。12月の実績はどうだったのでしょうか。今回も、聞き手はライターの安岡晴香さん。透明書店の代表を務める岩見俊介が、リアルな現状をお話しします。


小説・エッセイの選書基準を変更。「軽さ」を意識したセレクトへ

――12月の数字がまとまりました。さっそく実績を聞かせてください。
 
岩見:
売上は、597,288円。11月の60%くらいに縮小してしまいました。要因として大きいのは、2つ。イベントの収益が伸び悩んだことと、レンタルスペース代が0円だったことです。詳しくは、12月末時点の損益計算書(P/L)を見てください。

損益計算書の表

岩見:
主要項目だけ抜き出してみますね。

PL主要項目のグラフ
①売上高¥597,288 ②売上原価¥199,748 ③売上総利益¥397,540
④販売管理費¥845,332 ⑤営業利益¥-447,792

岩見:
ジャンルごとの売上実績と月次目標はこちらです。

売上内訳の円グラフ
書籍¥439,548 グッズ¥32,949 イベント¥82,500 レンタル¥0 飲食¥42,291
12月次目標の表
書籍¥600,000 グッズ¥99,000 イベント¥250,000 レンタル¥200,000 飲食 ¥100,000
書籍・グッズ・イベント・レンタルスペース・飲食の月次推移のグラフ

――では、書籍からお伺いしていきます。売上は11月よりマイナス5万円ほどで、ほぼ同等の金額です。何か大きく変えたことはありますか?

岩見:
入って左側にある大きな棚の用途を変更しました。もともとは漫画やベストセラー本など、比較的敷居の低い本を並べていたんです。透明書店にふらっと入ってきた人たちが手を伸ばしやすいように、という意図がありました。

ただ、以前Xでアンケートをとったときに、リトルプレスの扱いを増やしてほしいという声が多く寄せられて。そこで入口右側の小さめの棚と入れ替えるかたちで、リトルプレスコーナーを左側に移動させて、スペースを増やしました。

岩見の横顔

――リトルプレスがまず目につくような動線ですね。売れ行きに変化はありましたか。

岩見:
現状、リトルプレスの販売冊数は11月と比較してプラス2冊。微増です。ただ今は、店長がじわじわと点数を増やしている最中。これからの伸びに期待しています。

実は最近「透明書店=リトルプレスに力を入れている書店」と認識してくださる方が多いんです。リトルプレス作家さんのほうから直接コンタクトをとってくれることもあります。

――書店の個性が浸透しているんですね。

岩見:
うれしい流れですよね。

そうだ、発注まわりでもうひとつトピックがありました。店長と相談し、小説・エッセイの選書に、ある程度の基準を設けることにしたんです。

・小説:文庫、アンソロジー/短編集を主とする。
・エッセイ:アンソロジーを主とする。
※ただし透明書店で売れた実績のある著者のエッセイは単著でも並べる。

変更の意図は、手軽に読める「軽め」の選書にこだわりたいから。幅広く扱うのもいいのですが、それだとやはり、大きい本屋さんには到底勝てません。当店はスモールビジネスを応援する書店として、「スモール」な本の魅力を伝えられたらと思います。透明書店らしい魅力で勝負できるように試行錯誤しています。

取材を受ける岩見の後ろ姿

年末最終日は「振り返りパーティー」。おすすめ本をみんなで交換

――続いて、イベントについて見ていきますね。12月は全5件。売上は8万円台と伸び悩んでいます。特に印象に残ったイベントはありますか?

岩見:
どれも面白かったのですが、夏葉社さんのイベント「ひとり出版社は中華料理店に似ている!?夏葉社・島田さんに聞く仕事と暮らし」は、透明書店としていい発信ができたと思っています。

2009年から吉祥寺でひとり出版社を営んでいる、夏葉社・島田潤一郎さんが登壇。出版社を始めた経緯や、続けるなかでの思い、価値観をお話しいただきました。1人で働くのって自由でかっこいいなとか、ひとりで出版社を続けて本をちゃんと届けるってすごいことだなとか。具体的なエピソードを聞きながら、スモールビジネスの可能性に心を震わせられる時間でした。

――タイトルにある「中華料理店」というワードが気になります。

岩見:
そうですよね。これは島田さんのお言葉です。町の中華料理店って、常連さん一人ひとりに対して、味を落とさずに料理を提供していますよね。「目の前のこの人に喜んでもらえる」と考えながら妥協せずにやっている。その点で、町中華と出版社は共通しているというお話でした。

夏葉社は「1万人、10万人の読者のためにではなく、具体的なひとりの読者のために、本を作っていきたい」と考えているそうです。ひとりの読者が何度も読み返してくれるような本を目指したい。そんな島田さんの思いが込められたイベントタイトルでした。

PC内の資料を見て笑顔を見せる岩見

― なるほど、ステキな考え方です。

岩見:
当日は、夏葉社さんのファンの方もいらっしゃいました。他には、これから出版社をやっていこうと思っている方などが来てくださり、参加人数はオンラインを含めて40名ほど。新しい一歩を踏み出したい人たちに、勇気とヒントを届けられるイベントになったのではないかなと思います。

岩見:
そして、年末に「ことばで一年を振り返る会 -透明書店 Year End Party-」を開催したのも印象的でした。これは、最終営業日にみんなでワイワイしたいなと思って作った企画。お客様と一緒に1年を振り返るきっかけになればと思い、誰でも気軽に参加できる無料イベントにしました。

当日は、4人くらいのグループに分かれて、今年一番ワクワクしたこと、楽しかったことなど、いろんなテーマで経験や感情を発表。加えて、2023年に読んだ本を1人1冊持ってきてもらい、イベントの後半で交換会を行いました。ケータリングも用意して、盛り上がりましたよ。オンラインチケットなしの会場参加限定、枠を15名限定に絞った企画。すごくアットホームな雰囲気でした。

――どんな方々が集まりましたか?

岩見:
透明書店に初めて来たという方もいれば、イベントに何回か来ている方もいました。いろんなカラーのお客様が入り混じっていてステキでしたね。

今回、イベント告知時に「誰でも気軽に参加可能」というのを強調したんです。結果「透明書店をずっと気になってたけど、今まで来れなかった」「こういうハードル低めな会があってよかった」と言ってくださる方もいました。当店はどのイベントも初参加者大歓迎なのですが、最初は緊張しますもんね。これからも定期的に、初見の方が入りやすくなるような発信を続けていこうと思います。

笑顔の岩見横顔

――では、販売管理費を見てみますね。特にイレギュラーな数字はありませんが、消耗品として何か新たに購入した物はありますか?

販売管理費の表
給与手当¥304,584 通信費¥38,391 消耗品費¥22,207
支払手数料¥55,174 地代家賃¥280,000

岩見:
湯沸かし用のケトルを買いました。これまでは冷たい飲み物しかご用意がなかったんです。お客様からご要望をいただくことが多く、12月から温かいコーヒー、お茶をお出ししています。コーヒーは、渋谷に店舗を構えるCOFFEE SUPREMEさんとのコラボレーション。透明書店オリジナルデザインのドリップバッグから抽出しています。透明書店グッズとしても販売中です。

――かわいいですね。店内でくつろいでくださるお客様は増えてきましたか?

岩見:
本とドリンクを買って、しばらく読んでから帰っていくという方もチラホラいらっしゃいます。でも、もっとたくさんの方々にご利用いただきたいと思っているところ。ゆっくり過ごしてくださるお客様を増やすにはどうしたらいいか、工夫しなくてはなりませんね。

棚貸し書店のための内装完成!クラウドファンディング始動へ

――では、棚貸し事業の進捗についても聞かせてください。店内左奥スペースの内装が、かなり変わったようで。

岩見:
そうなんです。freeeの有志メンバーにも手伝ってもらいながら、壁や本棚を塗装しました。

Instagramで「作業しているからよかったら遊びに来てください」という旨を発信したら、周辺のお客様が見にきてくれて、ちょっとだけ塗装を手伝ってくれたことも。本格的な作業は業者の方にお願いして、かなり見違える空間になりました。

――改装にかかった資金は、どのくらいでしたか……?

岩見:
内装費は、全部合わせると120万ぐらい。一旦運転資金から支払いましたが、これをどうにか回収したいというのもあり、今回クラウドファンディングを募ることにしました。本当は年内にも募集を開始したかったのですが、文章など、考えれば考えるほど悩ましくて……。思った以上に時間がかかってしまいました。

苦い顔をする岩見

リターンは何種類か用意しています。シンプルにグッズでお返しするプランもあれば、棚主になれるというプランもあります。

※記事公開日現在公開中。1/19〜3/22(予定)

――棚主を広く募集するのは、このクラウドファンディングが終了してからですかね。

岩見:
そうですね。全部で54棚あるので、たくさんの方に参加していただきたいです。対象は「スモールビジネスを始めたいと思っている方」。本屋なので書籍はぜひ置いてほしいですが、1冊でも置いてくだされば、雑貨などの陳列メインでもOK。どんな方々と出会えるかワクワクしています。

――透明書店らしい空間になるといいですね。最後に、年明け1月の意気込みを教えてください。

岩見:
棚貸しの内装工事が終わり、いよいよ書店が大きく変わっていきます。これから、棚主が来てくださったり、棚貸し目当てのお客様がいらしたり、新しい利用が増えるかなと期待しているところ。賑わいが増えて、売上にもつながる、そんな状態が叶うといいなと思います。

当店は、4月で丸1周年。そろそろ本当に、黒字化が視野に入るようにしなくては。引き続き頑張って盛り上げていきます。

岩見後ろ姿

透明書店のあゆみ 

透明書店のあゆみの表
①営業日数:179日間 ②売上冊数:3,482冊 ③くらげに話しかけた回数:4,889回
④イベント数:31本/798名 ⑤本の紹介X投稿数:251回

12月の振り返りメモby遠井店長
お店の個性としてリトルプレスに力を入れようと決め、発注を進めた月でした。透明書店ならではの魅力をお届けできるよう、充実した取り揃えを目指します。楽しみにしていてくださいね。

2023年は、透明書店を始めて、たくさんのお客様との出会いがありました。これから愛され続ける書店になれるよう、試行錯誤していきます。近隣にお越しの際は、ぜひお立ち寄りください。皆さまのご来店をお待ちしています。

2024年、良いスタートをきれるのか。1月の「お金まわり公開記」もお楽しみに!


 ★日々のお金の動きや出来事をより細かく拾うために、店長遠井が毎日つけている営業日誌を公開する連載「透明書店店長・遠井の透明日報」がスタートしました! ぜひご覧ください。

取材・執筆:安岡晴香
ライター・編集者。広告代理店、総合出版社勤務を経て独立。ウェブや雑誌で主にインタビュー記事を担当している。
撮影:芝山健太 デザイン:Samon inc. 編集:株式会社ツドイ

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中央に「透明書店バックヤード」のタイトルと本が画面中に散らばっているキービジュアル。

記事では盛り込みきれなかった、書店経営の裏側を不定期Podcastでお届けします。まるでバックヤード(従業員控え室)でくりひろげられるような愉快な内緒ばなしを、ぜひお楽しみください。


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