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【講談社とコラボ】ミステリー本が約100冊売れた!新しい客層が続々来店

2023年4月、東京・蔵前に開店した「透明書店」。店名の“透明”の言葉通り、本連載『お金まわり公開記』では、売上や経費をありのままオープンにしていきます。読書シーズンである秋、11月の実績はどう動いたのでしょうか。今回も、聞き手はライターの安岡晴香さん。透明書店の代表を務める岩見俊介が、リアルな現状をお話しします。


講談社のフェアに参加!半月で売上約28万


PCのキーボード下の余白に貼られたfreeeツバメキャラクターのステッカー

――11月の数字がまとまりました。さっそく実績を聞かせてください。
 
岩見:
売上高は、969,648円でした。比較的好調だった先月の水準をキープできたかたちです。詳しくは、11月末時点の損益計算書(P/L)をご覧ください。
 

11月の損益計算書の表

岩見:
主要項目だけ抜き出してみますね。

PL主要項目のグラフ
①売上高¥969,648、②売上原価¥458,358、③売上総利益¥511,290、
④販売管理費¥920,504、⑤営業利益¥-409,214

岩見:
ジャンルごとの売上実績と月次目標はこちらです。

売上内訳の円グラフ
書籍¥486,272、グッズ¥28,416、イベント¥233,382、レンタル¥200,000、飲食¥21,578
11月の月次目標の表
書籍¥700,000、グッズ¥99,000、イベント¥250,000、レンタル¥200,000、飲食 ¥20,000 
書籍・グッズ・イベント・レンタルスペース・飲食の月次推移(8~11月)

――では、まず書籍からお伺いします。本を売るために新たに取り組んだことはありましたか?

岩見:
初めて、POPづくりに力を入れました。透明書店がオープンして約7ヶ月。初期在庫で入れてからまだ売れてない本があるため、在庫をアクティブに動かすために工夫しました。

棚に設置されたPOP
棚に設置されたPOP_2

――目立ちますね。逆に、今までPOPをつけてこなかったのには理由があるのですか?

岩見:
強くこだわっていたわけではないのですが、POPがあると情報量が多くなりすぎて、圧が強いかなと考えていたんです。お客様のペースで棚を見てもらえるよう、あえて書店からのサジェスチョンはしなくてもいいのかな、と。でも、普段本屋にあまり来ない人にとって、それではハードルが高いのかもしれないと思い至りました。そこで試験的にPOP設置に取り組んだわけです。

POPの制作は、freee社員が有志で行いました。実際に透明書店に来て1冊選んでもらい、自由にコメントを書いてもらったんです。ぎっしり書く人もいればシンプルに書く人もいて、十人十色。どのPOPも思いや熱量が伝わるものになったと思います。実際、POPを置いてからよく動くようになった書籍もありますよ。これからも、うるさくならない程度に続けて行くつもりです。

取材を受ける岩見

――今後の伸びに期待しています。他に、印象的だった取り組みはありますか?

岩見:
月の前半に実施した、講談社さんの施策『ミステリーライブラリー』です。このフェアのおかげで、11月の書籍売上を大きく積み上げることができました。

企画内容は、講談社のミステリー小説13冊を、13名のタレントが1冊ずつ紹介するというもの。モデルさん、俳優さんなどが、TikTokで担当書籍を紹介し盛り上げていました。それに付随する書店イベントとして、透明書店で対象のミステリー本を売ることになったんです。

対象書籍13タイトルを計500冊仕入れ、11月上旬の2週間限定で展開しました。

岩見:
期間中の3日間は、キャストが登壇するイベント『ミステリーライブラリーNight』を開催。トークショーと本のお渡し会を行い、たくさんのお客様に来ていただけました。そもそものきっかけは、私の知り合いで、このフェアの企画に携わっている方が声をかけてくれたこと。開催場所を探している中で僕のことを思い出し、「透明書店でできませんか?」とお問い合わせをくれたんです。

――素敵なご縁ですね。反響はいかがでしたか?

岩見:
102冊、計79,940円の売上になりました。対象書籍の購入者に、限定でオリジナルブックカバーをプレゼントし、これも好評。毎日、企画を目当てに来店してくださる方がいて、本を買ってくださいました。当店は、今までミステリー小説というジャンルに、あまり力を入れてこなかったんです。そのためチャレンジングな施策だったのですが、普段とは違う客層の方々に透明書店を知ってもらえる機会になりました。
 
なお、このイベントのために、レンタルスペースも契約いただきました。書籍を並べつつ、壁にパネルを貼るなどの装飾を実施。レンタルスペースの使用料として200,000円をいただいています。

インボイス制度を無料解説。参加者は200名超

――続いて、イベントについてお聞きします。11月の開催回数は5回。特にインパクトが大きかったものは?

岩見:
『小さな書店のインボイス制度を考えよう』という企画です。freee株式会社主催で、税理士の先生をお招きし、インボイス制度について詳しく教えていただきました。聞き手は、ブックコーディネーターとして活躍されている内沼晋太郎さん。「インボイスに登録する・しないで、何がどう変わるんだっけ?」という基本的なテーマから深堀りしました。

考え事をする岩見

――参加費は無料でしたよね。有料にしなかった理由は?

岩見:
スモールビジネスを応援したいという、freeeの強い思いがあったからです。インボイス制度は、まさに今多くの事業主が戸惑っているテーマ。だからこそ無料にして、できるだけ多くの方に見てもらえればという考えでした。結果、会場参加は10名、オンライン参加は193名。東京近郊だけでなく、全国から大勢に参加してもらうことができました。開催数日前から、SNSでイベントの情報が拡散されていたのがうれしかったです。

イベントでは、作家が書店にリトルプレスなどを委託販売する際の留意点も解説。僕らのような小さな書店の経営者や、リトルプレスを作っている個人事業主などに、ヒントを届けられるイベントになったかなと思います。アーカイブ動画も無料で公開しているので、興味があれば皆さんに見てほしいです。

(アーカイブ動画はこちらからご覧いただけます)

――あとは、句会の第1回目がありましたね。

岩見:
そうなんです。遠井店長の趣味である俳句・短歌を、店長きっての希望でイベント化しました。事前にテーマを設定し、テーマに合った一句をイベント前に提出して、集めたものをみんなで見ていくという内容です。

第1回目の参加者は3名。誰が詠んだ句なのかは伏せた状態で、みんなでシェアし、感想を言い合いました。場の安全性を確保するために、批判ではなく、ちゃんと建設的な評価をするという取り決めをしています。今後も、第2木曜に歌会、第4木曜に句会を開催する予定です。ワンコインで参加できるので、気軽にふらっと来てもらえたらと思います。

顎に手をやり返答する岩見

イス完備!ようやく「座って飲める書店」に

――では、販売管理費を見てみましょう。特にイレギュラーな数字はありませんが、消耗品費がやや高いですね。

給与手当¥340,929、通信費¥44,312、消耗品費¥60,370、
支払手数料¥54,521、地代家賃¥280,000

岩見:
11月で一番大きい買い物は、冷蔵庫です。お店に入るとすぐに目につくと思いますが、レジ台にドーンと置いてみました。「ドリンクを出してる感」がしっかり伝わると思います。

レジに設置された透明冷蔵庫

――たしかに、目を引きますね。

岩見:
ドリンクをゆっくり楽しんでいただけるよう、店内の環境も整えました。レジ横の小さなテーブルの前にスツールを置いたり、店内奥のスペースにイスを置いたり。店先の屋外スペースにも、テーブルとチェアを設置しています。ちょうどfreeeのオフィスに使われていない家具があったので、お借りしてきました。

岩見:
おかげで、イベント時に限らずドリンクを購入してくださる方が出てきました。本を買って、ちょっと一杯飲んでから帰る。そんな動きが出始めていて、うれしいです。

なお現在、店内奥のスペースをより有効活用するために、内装工事を進めています。照明も、ただの蛍光灯だったところを、スポットライトに付け替えました。だいぶおしゃれな雰囲気になったと思います。ここで飲食を楽しんでいただきつつ、棚貸しスペース兼アートギャラリーとして活用予定。壁の1面は棚貸し事業に使い、残りの2面をアート用のスペースにするつもりです。

棚貸しスペースのイメージ図をうつしたPC画面

――楽しみです。でも、内装工事となると、また費用がかかりそうですね。

岩見:
節約のために壁の塗り替えなどは自分たちの手でやることにしたのですが、それでもざっと見積もって120万円かかります。大きな出費ですが、先々のマネタイズを見据えて、このタイミングでアクセルを踏むことにしました。

でも、運転資金から捻出するのはとても不安。そこで、クラウドファンディングで調達しようと思っています。スケジュールはまだ見えていないのですが、1月中旬あたりにプラットフォーム上に公開したいです。支援者の方には、リターンとして、棚貸しに参加してもらえるような座組みを考えています。
※公開日現在、クラウドファンディング公開中!詳細はこちら

PCを覗き込みながら笑顔を見せる岩見

――棚貸しの展開開始はいつの予定ですか?

岩見:
準備ができ次第ですが、早ければ3月の下旬頃には始められるかと思います。借り主になったら、棚貸し期間が終わった後もコミュニティ活動に参加できるなどの仕組みを考えています。人と人のつながりが生まれる場所として、価値を提供できたらと思うんです。

透明書店は、スモールビジネスというテーマがある書店。その文脈に沿って、何か事業を始めたい人、何かを作って届けたい人など、一定のテーマをもとに借り主を集められたらいいなと模索しているところ。テーマがある書店ならではの棚貸しのかたちを、探っていきます。

――アップデートしていく透明書店に、ワクワクします。最後に12月の意気込みを教えてください。

岩見:
11月は、講談社さんのイベントのおかげで、たくさんの反響がありました。書店として良い風が吹いてたなという印象です。でも12月からはどんどん寒くなっていくので、まず集客が不安ですね。

オンラインイベントをもっと充実させるなど、今までやってない取り組みを考えなくてはいけません。店頭のドリンクも、冷たいものばかりなので、何か温かい飲み物を用意しなくては……。透明書店として初めて迎える冬。未知数なことばかりですが、工夫を凝らし、なんとか乗り切りたいと思います。

少し険しい表情をする岩見の横顔

透明書店のあゆみ

営業日数:159日、売上冊数:3,175冊、くらげに話しかけた回数:4,536回、
イベント数/参加人数:26本/788名、本の紹介ツイート数:210回

11月の振り返りメモby遠井店長

11月は『ミステリーライブラリー』をきっかけにたくさんの方に来ていただきました。普段蔵前に来られない方に、当店を知っていただけるきっかけになったと思うと、うれしい限りです。

11月下旬から冷蔵庫とテーブル、イスを揃え、飲食事業がますます盛り上がっています。ドリンクだけでなく、クッキーなどの軽食を販売することも考えているところ。本と一緒に一息ついてもらえる空間を作ってまいります。

あと、今月は外国人観光客の方から「英語の本はあるか」聞かれる頻度が少し増えた印象でした。英語の本はいっときほとんど売れなかったので追加していませんでしたが、また数と種類を増やしてみます。

12月になり寒くなると、お客様の足が遠のいてしまうかもしれません。でも、魅力的な本を揃えて待っています。皆様のご来店を楽しみにしております!


冬の寒さが、透明書店の売上にどう響くのか……。12月の「お金まわり公開記」もお楽しみに!

★日々のお金の動きや出来事をより細かく拾うために、店長遠井が毎日つけている営業日誌を公開する連載「透明書店店長・遠井の透明日報」がスタートしました! ぜひご覧ください。

取材・執筆:安岡晴香
ライター・編集者。広告代理店、総合出版社勤務を経て独立。ウェブや雑誌で主にインタビュー記事を担当している。
撮影:芝山健太 デザイン:Samon inc. 編集:株式会社ツドイ

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中央に「透明書店バックヤード」のタイトルと本が画面中に散らばっているキービジュアル。

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