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【4月でオープン1周年】初の黒字化を目指し豪華イベントを計画中

2023年4月、東京・蔵前に開店した「透明書店」。オープン以来、売上や経費などを『お金まわり公開記』で赤裸々にお伝えしています。今回明らかにするのは2月の実績。厳しい寒さが続くなか、売上はどうだったのか。聞き手はライターの安岡晴香さん。透明書店の代表を務める岩見俊介が、包み隠さずお話しします。


岩見横顔アップ

「PayPayポイント還元キャンペーン」が実績を底上げ

――2月は、東京23区でも大雪警報が発令されるなどかなり冷え込みました。売上はいかがでしたか?

岩見:
売上は、832,935円です。1月よりプラス6万円、昨年12月と比較するとプラス23万円という好調な実績でした。店舗ビジネスは天候的に「2月と8月は厳しい」という通説があるんですが、蔵前の先輩方からは「この辺りは冬でもそんなに客足が減らない」と聞いていたんです。その言葉通り、安定して来客がありました。詳しい数字は、2月末時点の損益計算書(P/L)をご覧ください。

損益計算書の表

岩見:
主要項目だけ抜き出してみますね。

PL主要項目のグラフ
①売上高¥832,935、②売上原価¥727,851、③売上総利益¥105,084、
④販売管理費¥836,226、⑤営業利益¥-731,142

岩見:
ジャンルごとの売上実績と月次目標はこちらです。

売上内訳の円グラフ
書籍¥693,288、グッズ¥39,819、イベント¥76,727、レンタル¥0、飲食¥23,101
2月の月次目標の表
書籍¥600,000、グッズ¥50,000、イベント¥150,000、レンタル¥0、飲食¥40,000
直近4ヶ月の書籍・グッズ・イベント・レンタルスペース・飲食の月次推移

――書籍は、目標達成率115%です。かなり好調ですね!

岩見:
実は2月は、台東区でQRコード決済サービス「PayPay」のキャンペーンがありました。PayPayでお支払いいただくと、決済額の20%がポイントとして還元される企画です。このおかげで売上が増えました。実際に、2月はPayPay決済の割合が突出して高かったんです。1月単月では全体の16%、これまでの累計は14%のところ、2月単月だと27%を超えています。

月ごとの決済方法比較の表。

岩見:
PayPay側の企画なので、店舗側の負担はありません。対象店として選ばれ、POPなどの掲示物が送られてきました。売上の積み上げにつながるありがたい企画でしたね。ぜひ、また実施してほしいなと思います。

笑顔の岩見正面

推した本が売れる!「本のセレクトショップ」としての手応え

――書籍の展開で、何か工夫したことはありますか?

岩見:
まず、新刊の入荷冊数を見直しました。今までは平均1〜3冊の範囲で仕入れていましたが、「これは」という本があればたくさん仕入れて、平台に2面で並べてみることにしたんです。2月に特に力を入れたのは『インタビュー大全: 相手の心を開くための14章』(大塚 明子 著/田畑書店)。田畑書店さんには頻繁に当店に通ってくださる担当の方がいて、今回「この新刊は透明書店に合う」とプッシュしていただきました。結果、1日4冊売れるなど、反響がありましたね。

また、同様に注力したのが『東京となかよくなりたくて』(satsuki イラスト, 月水 花 著/月と文社)。イラストが素敵な本で、僕自身すごく気に入ったので、展開を強化しました。昨年12月に出た本ですが、透明書店の推し本として取り扱ったところ、2月における販売冊数1位の書籍になりました。

――推した本がしっかり売れるのは、素敵な傾向ですね。

岩見:
一般的な大きな書店と比べて、透明書店はセレクトショップとしての色合いが強いと自負しています。透明書店で推しているなら買ってみようかな……そんな風に思っていただけているのなら、書店としてすごくうれしいことですよね。

――ちなみに数字の面で今回、売上の原価率が高めなのが気になりました。どんな事情があったのでしょう?

売上高:832,935円
売上原価:727,851円

岩見:
リトルプレスの展開に力を入れた関係で、仕入れのボリュームが多くなっています。以前の取材で、入口すぐ左側の棚でリトルプレスを展開しているとお話しました。これが好評だったので、店内中央の丸テーブルにもリトルプレスを並べることにしたんです。

また、3月には「TOKYO CREATIVE SALON 2024」に参加し、リトルプレスを販売する予定です。会場は、有楽町にある阪急メンズ東京。その仕入れにかかった額も、2月に計上されています。

小さな出版社との縁を大事に「透明書店らしさ」を追求

――イベントについてもお伺いしていきます。先ほどお話にあがった『東京となかよくなりたくて』の出版社、月と文社さんとは、イベントも実施したんですよね?

岩見:
そうなんです。イラストレーターのsatsukiさんと、月と文社代表の藤川さんをお招きし、書籍の制作にまつわるお話や、藤川さんがひとり出版社を立ち上げた経緯などをお話しいただきました。また、ギャラリースペースでは、イラスト作品展を開催。書籍で使用されたイラストのほかにも、satsukiさんによる新規イラストを展示・販売したり、ポストカードを販売したりしました。スモールビジネスを応援する書店として、いいご縁を結べたなと思います。

透明書店「東京となかよくなりたくて展」の様子

岩見:実際にやってみてすごく盛り上がったので、今後もイベントと展示をかけ合わせた取り組みができればと思っています。

その他、新しく始めたイベントもあります。「TOMEI BOOK CLUB」という読書会で、小さな出版社が出している書籍の中からテーマ本を決めて、みんなで集まって対話を重ねるというものです。好評だったので、今後も不定期で続けていけたらいいなと思っています。

――飲食事業についても聞かせてください。新しい取り組みはありましたか?

岩見:
SHINRA」さんというブランドのノンアルコールのドリンクを扱いはじめました。きっかけは、freeeの社員から情報をもらったこと。透明に縁のあるものをSNSで発信をしている「tomei/透明愛好家」という方がいらっしゃって、SHINRAさんとコラボドリンクを作っていたんです。それを見た社員が、「こんなのあるよ」と僕に声をかけてくれました。

――メニューが充実してきたので、もう少し飲食の売上が伸びるといいですね。

岩見:
本当にそう思います。現状、飲食事業はまだまだイベントの客数に大きく依存しているんです。イベントがなくてもどんどん売れる状況を作りたいですね。遠井店長が言っていたのですが、ある日の18:30頃、本を購入されたお客さまがドリンクがあることに気づいて「何時までやっていますか」と尋ねてくださったみたいなんです。19時閉店だったので購入にはつながらなかったのですが、もしかしたら、イベントなしで夜営業する日を設けてもいいかもしれません。お客様から「開けてほしい」という要望があったら、限定的に試してみたいです。

――続いて、販売管理費を確認します。

販売管理費の表
給与手当¥304,793、通信費¥44,037、消耗品費¥15,194、
水道光熱費¥21,747、支払手数料¥58,082、地代家賃¥280,000

岩見:
特にイレギュラーな動きはありません。暖房のせいか水道光熱費がやや高めですが、他はおおよそいつも通りの数字ですね。この販売管理費をペイできるくらいに売上を積み上げ、早く黒字化したいところです。

目指せ、初の黒字化。1周年を迎える4月に期待

――黒字化に向けての大きなフックとして、棚貸し事業に期待しています。進捗はいかがですか?

岩見:
1月の取材でもお答えしたように、クラウドファンディングを実施しています。おかげさまで早々に目標額を達成しました。引き続き募集はかけていて、最後の1週間というタイミングです(取材時点)。一般的にクラウドファンディングって、最初に大きく伸びて、中間はフラットな推移になり、終了間際にまた伸びると言われています。終了間際まで、SNSなどで地道に呼びかけようと思います。

協力してくださった方にはさまざまなリターンを用意しています。特に人気があるのは、棚主になれるプラン。当初は全54棚あるうちの30棚を開放していましたが、ありがたいことにすぐ埋まったため、今はほぼ満数に近い棚をリターンとして準備しています。棚貸し事業の正式なスタートは、4月下旬の予定。楽しみにしていてください。

岩見横顔笑顔

――最近は、4月の透明書店1周年に向けて、着々と準備を進めているそうで。
岩見:
そうなんです。黒字化の追い風となるように、1周年施策をいろいろと仕込んでいるところです。1年間で特に売れた本を紹介したり、ネオンアーティストの方とコラボして1周年記念グッズを展開したり、ギャラリースペースで作品を展示したり。かつてなく盛り上がる期間にしたいと思っています。

4月13日・14日には、『小さい出版社フェス 本の産直市』と題した企画を実施します。小さい出版社の本を並べたり、出版社の方々に遠井店長がインタビューをしたり。透明書店らしい取り組みをする予定です。さらに4月18日には、オープン1周年記念イベントを実施します。開店イベントにも来ていただいたNUMABOOKS代表の内沼晋太郎さん、そしてマガジンハウス取締役の西田善太さんをお招きし、透明書店の1年間を一緒に振り返ります。書店を取り巻く現況についてもざっくばらんにお伺いし、業界の未来に向けてみんなで考えられたらいいですね。示唆に富む時間になるのではと、僕自身楽しみです。

(1週年記念イベントは以下参照)

――豪華な1周年になりそうです。お客様に向けてメッセージをお願いします。

岩見:
ぜひ、気軽に来ていただけたらうれしいです。昨年のオープン当時と比べて、ご来店いただくための入口がいろいろできたと思います。小さな出版社さんの本に出会えるとか、かわいいグッズがあるとか、イベントや企画展があるとか。だから、それぞれのモチベーションで、興味が湧いたタイミングで来店いただけたらうれしいですね。既に透明書店に来たことがある方はもちろん、今回初めて来るという方も大歓迎!みんなでワイワイして、この1年を労えたらと思います。ご来店を、心からお待ちしています。

透明書店のあゆみ 

透明書店のあゆみの表
営業日数:220日間、売上冊数:4,344冊、くらげに話しかけた回数:5,672回、
イベント数 /参加者数:41本/918名、本の紹介ツイート数:275回

2月の振り返りメモby遠井店長
2月も多くのお客様に来ていただくことができて、ホッとしています。クラウドファンディングも好調で、棚貸し事業スタートもいよいよ目前となりました。1周年を迎える4月に向けて、イベントについても試行錯誤しているところです。透明書店をこれまで支えてくださったお客様はもちろん、初めていらっしゃるという方も含めて、みんなで楽しく周年をお祝いできたらうれしいです。どうぞ気軽にいらしてください!
 
最高の1周年を迎えるべく、勢いを増していく透明書店。3月の「お金まわり公開記」もお楽しみに!

透明書店の本_2402

 ★日々のお金の動きや出来事をより細かく拾うために、店長遠井が毎日つけている営業日誌を公開する連載「透明書店店長・遠井の透明日報」がスタートしました! ぜひご覧ください。

取材・執筆:安岡晴香
ライター・編集者。広告代理店、総合出版社勤務を経て独立。ウェブや雑誌で主にインタビュー記事を担当している。
撮影:芝山健太 デザイン:Samon inc. 編集:株式会社ツドイ

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中央に「透明書店バックヤード」のタイトルと本が画面中に散らばっているキービジュアル。

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