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【悲報】売上がオープン月の半分に。切り札は「レンタルスペース事業」と「飲食事業」

蔵前に店舗を構える「透明書店」では、さまざまな情報を赤裸々に発信中。この『お金まわり公開記』では、毎月の経営状況を公開しています。
今回は、6月の売上や利益について取り上げます。聞き手は、ライターの安岡晴香さん。透明書店の代表を務める岩見俊介が、正直に答えます。

取材を受ける岩見

売上は56万。初の2ケタ、かつオープン初月の半分に……

――今月もよろしくお願いします。6月の数字が締まりましたね。詳しい実績数値を教えてください。

岩見:
はい。こちらが6月末時点の損益計算書(P/L)です。

損益計算書の表

岩見:
わかりやすいように、今回も主要項目をピックアップしましょうか。

PL主要項目のグラフ
①売上高567,830、②売上原価388,830、③売上総利益179,000、
④販売管理費948,004、⑤営業利益-769,004、⑥当期純利益-939,000

岩見:
6月の売上は567,830円です。ここにきて大きく数字が落ち込みました。

減少傾向は5月から見えていたので、6月の目標は「書籍だけで売上70万達成」と保守的なラインにしていたものの、達成ならず。しかも法人税17万円の支払いもあり、純利益はマイナス93万円以上と、かなりしんどい数値になりました。

――4月、5月と売上100万円を超えていたので、大幅にボリュームダウンした印象ですね。
書籍・グッズ・イベントのカテゴリ別ごとに状況を見たいです。

岩見:
比率と金額は以下の通りです。4〜6月の3ヶ月分の推移もご覧ください。

売上内訳の円グラフ
書籍売上:430,208円、グッズ売上:60,142円、イベント売上:77,480円


書籍グッズイベントの月次推移のグラフ

――グラフで見ると、特に書籍の売上が落ちているのがわかります。

岩見:
6月は店頭に立っていた時から、今月はまずいなと思っていました。5月よりもお客様の数が明らかに少ないのがわかったからです。梅雨の時期だったので天気のせいもあると思います。とはいえ、晴れている日も閑散としていることが多かったかな。集客をどう増やすか、そしてお店に来ていただくだけでなく、いかに購入していただくかまでデザインする必要があります。

――来ていただけても、購入につながらないケースも多いですか?

岩見:
はい。じっくり見て買ってくださるお客様もいるものの、入口付近の棚を1分くらい眺めて出て行ってしまうお客様が大半です。もちろん何も買わずに見ていただくだけでも大歓迎なのですが、せっかくなら「欲しい」と思える素敵な本に出会っていただきたいので、もどかしさがあります。

そこで最近は、コアな本好きの方々だけでなく、いわゆるライト層のお客様の興味も引けるように、工夫しているところです。たとえば目立つところに置く本を少し柔らかめのテーマに変えてみるなど、お客様の反応を見ながらマイナーチェンジを繰り返しています。

――お客様に響くかたちが見つかることを期待しています。この数字だと、手元のキャッシュ状況も、厳しくなっていそうですね。

岩見:
おっしゃる通りです。現金が足りるか不安だったので、6月は初期段階から仕入れを絞っていました。売れた本の補充を一部に限定し、かつ新刊の仕入れも厳選してもらうよう、遠井店長にお願いしました。仕入れを絞れば売上の機会損失になりますが、まずは事業を破綻させないことが先決。苦渋の決断です。

取材を受ける岩見

「イベントの申し込みがたったの2件で……」

――苦しい状況ですが、イベントの売上は先月に比べて伸びましたね。
岩見:
そうですね。5月分の取材でお話したように、6月はとにかくイベントの回数を増やして売上を作る方針でした。回数としては2回ですが、透明書店に合いそうなイベントをこちらから提案できたのは進歩だと思います。今後もこちらから呼びかけを続けて、実施頻度をどんどん上げていきます。

――それは楽しみです。ちなみにイベントの集客は順調ですか?

岩見:
そこがまさに、課題に感じているところなんです。

実は6/30(金)に行った「蔵前のスモールビジネスと透明書店」というイベントは、2週間前の時点で申込み人数が2名だったんです。さすがに焦ったので、登壇者のTOKYO PiXEL. shop & gallery大図まことさんに状況をそのままお伝えしました。すると大図さんはすぐに自身のnoteで告知記事を投稿してくれて、一気にお客様が集まりました。当日は、飛び入り参加希望の方もいらっしゃって臨時席を準備したほど。25人の定員に対して27名集客できました。大図さんには感謝しかありません。

――おお、すごい展開ですね。

岩見:
当店のイベントとしては過去最高の参加人数になり結果オーライではありましたが、手放しで喜べるわけではありません。僕らのお店自体の集客力を伸ばさないといけないなと感じています。

もちろん少人数開催でも、それはそれで独特の濃さや一体感が出るので、素敵なイベントになるんですよ。でも、透明書店ならではのコンテンツを一生懸命提供しているからこそ、もっと多くの方に来ていただきたいですよね。

売上の面でも、集客力向上は喫緊の課題です。今はX(Twitter)で主に告知をしていますが、別の方法も考えた方がいいかもしれません。

イベント中の様子

ECサイトをオープン。新しい収益の柱として期待

――そういえば、ECサイトをスタートされましたよね? プレスリリースを見ました。

岩見:
そうなんですよ。より多くの方に透明書店でのお買い物を楽しんでいただけるよう、オンラインでの販売を始めました。小さな出版社やリトルプレス(少部数発行の出版物)の書籍を扱っています。また、オリジナルグッズもご用意しています。

透明書店のECトップページト

ECサイトURL

岩見:
もちろん、大手のネット書店の利便性やお得感にはどうしても勝てません。でも透明書店のECサイトならではの出会いを楽しんでいただければと思っています。

特に当店を応援してくださる方の中には、遠方にお住まいの方も多くいらっしゃいます。「店舗に行くのは難しいけれど、買って応援したい」というありがたい声をいただくこともあったので、現地に来られない皆様にもご購入いただけたらうれしいです。注文を受けたら、店長が心を込めて包装しお届けします。

――素敵ですね。ECサイトからの売上はどのくらいですか?

岩見:
正直ぼちぼちといったところで、そこまで大きな金額にはなっていません。6月の売上は合計31,668円でした。プレスリリースを出したものの、ECサイトの存在がまだまだ知られていないなと感じます。タイミングを見て、インターネット広告を打つなどリーチを広げていく必要がありそうです。

店長が「食品衛生責任者」の資格を取得

――続いて、販売管理費の主な項目を見ていこうと思います。

給与手当:317,488、研修費:10,910、法定福利費:49,968、
通信費:40,945、地代家賃:280,000

――大きな出費ではありませんが、「研修費」が気になります。これは?

岩見:
店長が、食品衛生責任者の資格を取得してくれたんです。研修費は、そのためにかかった費用ですね。

――なるほど。取得は大変でしたか。

岩見:
コロナ前は研修会場に行って取得する必要があったようですが、今はオンラインで約6時間で取得可能です。店長が頑張って勉強してくれたのでとてもスムーズでした。

おかげでコーヒーやお酒を楽しみながら本が読める、より魅力的な書店になりそうです。これまでお客様からもfreee社員からも飲食提供に関する熱い希望が複数寄せられていたので、期待に応えていきます。

――現実的に動き出しましたね。提供開始はいつ頃からですか?

岩見:
9月頃を目処に考えています。店内奥の「不透明な部屋」は現在フリースペースとして貸し出していますが、レンタルされていない時間はそこをカフェスペースとして使用する予定です。かつお店の軒先も使えるので、テラス席も作れたらと思います。

――レンタルスペース事業と飲食事業で、効率的に売上を作れそうですね。

岩見:
はい。ちなみに、書店をロケ地として活用いただく撮影用レンタル事業も始めました。少しでも売上を伸ばせたらと思っています。

東京ロケーションボックスwebサイト掲載ページスクリーンショット
東京ロケーションボックスwebサイトより引用(https://www.locationbox.metro.tokyo.lg.jp/catalog/detail.html?pdid=7832)

そして実は6月初旬から、営業時間も変更してます。これまで14時から15時は休憩時間だったところを、開店を遅らせることで通し営業にしたんです。これによりレンタルスペースとしての使い勝手もよくなりましたし、何より本を買いに来るお客様が休憩時間を気にせずにご来店いただけるようになりました。

――苦しい中でも、少しずつ進化しているのが伝わってきます。最後に、7月の展望をお聞かせください。

岩見:
6月はご覧いただいた通りの苦しい結果で、正直、このままやっていくとどんどん縮小していくんじゃないかという不安にさいなまれています。今後も本を売り続けたいからこそ、まずは本以外のジャンルで売上を作る必要がありそうです。本屋としての精度を引き続き高めつつも、レンタルスペース事業と飲食事業に、貪欲にトライしていきます。

営業日数:計51日、売上冊数:計1,417冊、くらげに話しかけた回数:1617回、
イベント数:計5本/123名、本の紹介ツイート数:計67回

●6月の振り返りメモby遠井店長

じめじめした天候もあって、お客様が少なめだった6月。来店しても足早に帰られてしまうお客様も多い印象でした。どうやったらお客様に響くのか。改めてじっくり考えつつ、マイナーチェンジを繰り返しています。

もしかすると現状の棚は、「本を探そう」という能動的な姿勢のお客様以外には、少々ハードルが高いのかもしれません。選書の方針はぶらさず、まずは陳列の仕方を工夫していこうと思います。

今月に限ったことではありませんが、外国人観光客の方がちらほらいらっしゃいます。浅草が近いからでしょうか。彼らに興味を持ってもらえるよう、日本文化がテーマの翻訳本や、おりがみの本など、日本らしい本も揃えています。とにかく考えるべきは、いかに来店いただけるか。そしていかにお気に入りの本と出合っていただくか。悩むことも多いですが、手探りでいろいろ試すのが面白くもあります。

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売上が伸び悩む中、挽回に向けて種をまいた6月。努力は成果に結びつくのか、7月の「お金まわり公開記」もお楽しみに!

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取材・執筆:安岡晴香
ライター・編集者。広告代理店、総合出版社勤務を経て独立。ウェブや雑誌で主にインタビュー記事を担当している。
撮影:芝山健太 デザイン:Samon inc. 編集:株式会社ツドイ 

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中央に「透明書店バックヤード」のタイトルと本が画面中に散らばっているキービジュアル。

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